ビッグネームが殺到する中堅化学の底力

 ところが、だ。その逆風が吹いているはずの化学業界で、なんと千載一遇のチャンスを手にした企業がある。三菱ケミカルやカネカなどの、放っておけば土に還る「生分解性プラスチック」を製造できるメーカーだ。

 特にカネカの鼻息は荒い。欧州での採用を増やしているのはもちろんのこと、今年4月には、セブン&アイ・ホールディングス(HD)と資生堂というビッグネームと、100%植物由来の生分解性プラスチック「カネカ生分解性ポリマーPHBH」を用いた製品の共同開発を立て続けに発表した。

 セブン&アイ・HDとは、セブン-イレブンの大ヒット商品「セブンカフェ」のストローへの導入から始め、カトラリーやレジ袋への使用も検討する予定。資生堂とは、化粧品の容器、用具、包装資材、什器などでの展開を検討するという。

 今後もカネカの共同開発先は広がりそうだ。例えば、ペットボトル容器の一部を生分解性プラスチックにする意向を持っているとされているコカ・コーラグループは、同社の最大の売り込み先となるだろう。

 PHBHがにわかに注目を集めているのは、土中のみならず、海水中でも分解するとのお墨付きを欧州(ベルギー)の代表的な認証機関から取得しているからだ。

 目下、近々の課題とされているのは海洋プラスチックの削減だが、実は海水中は土中より微生物の数が少なく、生分解性と銘打っている製品でも海水中では分解しないものが意外と多い。それだけにお墨付きを獲得しているカネカの製品は貴重だというわけだ。

「土に還るプラスチック」の普及を阻むハードル

 さかのぼれば、生分解性プラスチックは2000年ごろから環境負荷を低減する新素材として話題にはなっていた。05年に愛知県で開催された「愛・地球博」のカトラリーにも採用されたくらいだ。

 話題になるだけで終わってしまった最大の理由の一つはズバリ、価格だ。生分解性プラスチックは既存の汎用プラスチックに比べて高い。コーヒーショップのストローでいうと、10~20倍にまで跳ね上がるといわれる。

 カネカ関係者によれば、顧客は「企業のイメージダウンを避けるためには多少コストが掛かっても仕方がないという方向に考え方を変えている」というが、製造コストの削減努力は必須だ。PHBHでは、原材料の見直しや加工技術の向上、製造プロセスの改革などを推し進めていく必要がある。

 中でも製造プロセスが改革できれば、工場の初期投資から減らせるようになる。現状、PHBHは年2万トンの生産能力を持つ工場を造ろうとすると100億円も掛かるというから、効果は絶大だ。

 生分解性プラスチックは、そもそも加工が難しい上、生分解するだけに食品容器に使うと中身が長持ちしにくくなるなど、乗り越えなければならない壁は多い。

 「20年越しの普及の夢」は、今度こそ現実のものとなるだろうか。

(ダイヤモンド編集部 新井美江子)