「横浜シーサイドライン」の逆走事故で、自動運転に対する懸念の声が高まっている。しかし一口に「自動運転」といっても、実はその内容はさまざま。今回の事故路線と同規格、かつ無人運転で運行しているのは、神戸の「六甲ライナー」、東京の「ゆりかもめ」「日暮里・舎人ライナー」だが、自動運転はどのようなシステムで構成されているのか、どこに不具合の可能性があるのか、問題を整理した。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
「自動運転」にも実は
いろいろな種類がある
6月1日夜、横浜市南部を走る「横浜シーサイドライン」の新杉田駅で、駅を発車した列車が進行方向と逆に動きだし、車止めに激突するという事故が発生した。原因は不明で現在も運転を休止しており、復旧のめどは立っていない。
シーサイドラインはコンクリートの専用軌道をゴムタイヤで走る「新交通システム」で、1989年に開業。1994年からコンピュータ制御による無人運転を行っているが、これまで事故や大きなトラブルは発生していなかった。
近年、鉄道業界では将来的な人手不足を見込んで自動運転技術の開発が進んでいる。JR東日本は山手線や新幹線でドライバーレス運転の実現に向けた試験を行っており、大阪メトロも万博会場となる夢洲まで延伸する中央線について、一部区間を自動運転で運行すると発表済みだ。JR東海が建設を進めるリニア中央新幹線には運転士は存在せず、指令所で運行を管理することになる。
シーサイドラインの事故原因は現在も調査中で、利用者の間には自動運転全般への不安や懸念も広がっているようだ。そこで、原因や影響について臆測で論じることは避けつつも、論点を明確にするために、新交通システムを含む一般的な鉄道の自動運転・無人運転の仕組みと限界を解説したい。
鉄道では運転士の運転操作を必要とせず、発車から停車までコンピュータが自動的に制御する運転方法を自動運転といい、そのための装置を「ATO(列車自動運転装置)」と呼ぶ。ただし自動運転とは必ずしも「無人運転」を意味するものではなく、通常の列車と同様に運転士と車掌が乗務する形態(ツーマンATO運転)、運転士が1人で乗務する形態(ワンマンATO運転)、運転士ではなく添乗員が乗務する形態(ドライバーレスATO運転)、乗務員が一切乗務しない形態(無人運転)など、いくつかの段階に分けることができる。