「私も病気ではないのか」。芸能人やスポーツ選手の病気が報じられる度、心配がよぎります。
「私も病気ではないのか」。芸能人やスポーツ選手の病気が報じられる度、心配がよぎり、検査ばかりしてしまう人がいます(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「私も病気ではないのか」。芸能人やスポーツ選手の病気が報じられる度、心配がよぎります。中には、自分が深刻な病気と思い込み、「ドクターショッピング」をしてしまう人もいます。まさに「病は気から」「気で病む病」です。このような“とらわれ”から抜け出せずに、一時も心が休まらない病気不安症(心気症、ヒポコンドリー)からどうすれば立ち直ることができるか、実際の症例をもとに、「森田療法流対処法」による改善法を解説します。(談/東京慈恵会医科大学附属第三病院院長・精神医学講座教授・森田療法センター長 中村 敬、構成/慈恵大学広報推進室 高橋 誠)

完全主義から、病気の心配にとらわれる
60代男性の悩み

 今回は、大手メーカーの研究職として、緻密で几帳面(きちょうめん)な性格を生かし、着実な研究成果を挙げていた60代後半男性の事例をご紹介します。

 数年前に定年退職してからは、碁会所に通っていましたが、最近は中断しています。元来、内向的で神経質な性格。それに加え、子どものころに腎臓病で半年間自宅療養した経験もあって、元から健康不安を抱きやすい傾向がうかがわれます。

 長年の勤務の間は持ち前の完全欲、几帳面さが仕事によく発揮されていましたが、退職後、興味と関心のほとんどが自身の体に向かってしまい、体調にばかり注意を向けた結果、病気不安が高じてしまったようです。不安を払しょくしようとして、たびたび受診・検査を受けた結果、逆にますます不安が募り、かかりつけ医の紹介で、中村敬先生に相談しました。

相談の内容
「体重が減るのは、胃がんだからでは?」

 かかりつけ医を2週間に一度受診するほかは、普段は自宅で横になっているか、病気に関する情報をインターネットで検索しています。趣味の囲碁にも関心が向かなくなりました。6~7年前から年に1キロくらい体重が減少しはじめたことが、ずっと気になっていました。数年前に定年退職し、しばらくたったころから体重減少の原因について考えこむようになりました。健康食品の摂取に努めたのですが、期待に反し、さらに体重は減少しました。