言葉を発する時、つっかかったり、声が出なかったりすることを「吃音(きつおん)症」という。幼児の吃音は約20人に1人と世界的に同じ割合で現れ、消えずに残るケースは約1%。日本では100万人近い人が吃音症だと言われる。吃音は周囲に理解されにくいことも、辛さが増す要因だ。そんな、吃音の障害について、子育ての現場から考えてみた。
子どもの吃音には
どう対応すればよいのか?
子ども本に携わる仕事の関係で、子ども向けの読書イベントに関わる機会が多いのだが、以前「絵本のお話し会」で吃音のある男の子と出会ったことがある。
同じグループの子どもたちは、「ボ・ボ・ボッ…」という男の子に無邪気に反応し、「どうしてそんな話し方するの?」と聞くのだった。しかし男の子は、自分の吃音をあまり自覚していない様子で「変じゃ、じゃない!」と反論していた。
少し離れたところから見ていた母親は、「私も、息子の話し方が、小学校2年生になってからちょっとおかしいと気になっているんです。本人に注意しても、ちゃんと話してるって嫌がるし…」と、側にいた私に悩みを訴えた。
頻繁ではないけれど、男の子の言葉がつっかかる度に、周りの子どもが目を向ける。もしかしたら、このお話会は、男の子に「自分は変な話し方をしている」と意識付けをしてしまったかもしれないと、今でも気になるのだった。
吃音に悩むのは、子どもの症状を直したい親だけではないことも、別のイベントで知る機会があった。親の吃音も子育ての深刻な悩みになっているのだ。
自身に吃音があるという母親は、子どもへの本の読み聞かせや会話を躊躇すると話してくれた。「子どもの本には、パッパッという破裂音や擬声語が多く苦手です。また、子どもは親の真似をするので、私の話し方がうつってしまうのではないかと心配しています」。「子どもの心の発達には、保護者の言葉の働きかけが大切」であることを目的の一つにしている読書推進活動に、吃音への理解が必要なことを認識した瞬間だった。