実は平林は、竹内を入社前から知っていた。会社のレクリエーションで同僚とバドミントンを楽しんでいたとき、当時大学生の竹内が参加してきた。「バドミントンの教え方がうまく、会話能力に秀でている」。平林は当時の印象を鮮明に覚えていた。

「現場の社員が『売れる』と思える商品でなければ消費者に売れるわけがない。トップダウン型の商品企画からボトムアップ型に変えないといけない」。平林にはそんな思いがあった。「もし売れなかったら一緒に謝ろう」。竹内にそう声を掛け、企画の抜本的な洗い直しを任せた。

 竹内は販売の現場で客の声を聞き、オリゴDEクッキングが売れない理由を探った。

 問題の一つは価格にあった。容量700グラムで店頭小売価格は約700円。それはメーカー側のプロダクトアウトの発想で設定された価格だったが、家庭用調味料としては高い。「ワンコインで買える価格でないと手に取ってさえもらえない」。竹内はそう結論付け、容量を350グラムに抑えて税込み500円以下の価格を設定した。

 そして最大の問題は、商品コンセプトの分かりづらさだった。そこで「沖縄・奄美の国産さとうきび原料100%使用」という特徴を前面に出し、和のイメージのデザインに一新。中身はそのままに、サトウキビが連想される「沖縄・奄美のきびオリゴ」に商品名を変えた。

 15年に発売すると、いきなり販売数12万本のヒット商品となり、翌年に20万本、18年には30万本を超えた。取扱店は発売当初から5倍以上に増え、全国のスーパーなど3600店に広がる。「卵焼きがおいしくなった」「便通改善に使い続けたい」。購入者からは、そんな声が寄せられる。

 10年以上の試行錯誤を経て、平林がようやくたどり着いた初のヒット商品。砂糖全体の消費量からすればまだまだ少数だが、「液体砂糖を使う人が少しずつ増えている」という手応えを感じている。

 常識を変える挑戦は、まだ始まったばかりだ。(敬称略)

(ダイヤモンド編集部 重石岳史)

【開発メモ】
「沖縄・奄美のきびオリゴ」

 沖縄と鹿児島・奄美の国産サトウキビを100%使用したフラクトオリゴ糖の液体砂糖。砂糖と比べてカロリーは30%カット。保存料や着色料、人工甘味料を一切使用していない。容量350グラムで店頭小売価格は税込み500円以下。イオン系スーパーやイトーヨーカドーなど全国で販売中。