戦略で対処法を見い出す
では、よく使う戦略を1つ紹介します。
ここに、AとBという2つのケースがあります。
A:細かいことにこだわる上司にアイデアを承認してもらわなくてはいけない。
B:営業先で、厳しい言葉を使う担当者の信頼を勝ち取りたい。
Aは「身内」、Bは「営業先の担当者」が相手です。異なるケースだと思われがちですが、どちらも「相手の性格」が共通しています。
性格や感情が絡む問題では、当事者が「望んでいるもの」が本質であることが多いです。
Aの上司は、細かいことにこだわる面倒な相手ですが、突っ込まれるのが嫌だからといって、細部を隠すのはいい手とはいえません。「細かいことまで把握したい」人は、とにかく情報を欲しがります。都合の悪い情報を出さなかったら、よく検討せずにアイデアを出したと思われ、却下されるかもしれません。
仮にその場はうまくやり過ごせても、後から答えにくい、細かい質問をされて、白紙に戻される可能性もあります。こういう相手には、アイデアを実行した場合に想定される問題点と対処法まで説明したほうが、結果的にはスムーズに進みやすいのです。
Bの例でも、担当者が欲しいのは「正確な情報」です。担当者の人間性に問題がない限り、ベストな選択をしたいがために、態度が厳しくなるからです。自社製品を使ってほしい気持ちはわかりますが、厳しい指摘を恐れて製品の欠点をごまかしていては、当然信用を失ってしまいます。
実際、病院を訪れる製薬会社のMR(医薬情報担当者)で、自社製品を「最高の薬」としてプレゼンする人は信頼されません。医師側は、すべての薬には副作用があることを知っていますし、競合製品の優れた点についても情報を持っています。フェアな情報提供を求めているのです。
これらのケースのように、相手が細部にこだわったり、ある程度の知識を持っていたりする場合には、長所だけでなく短所まで含めてプレゼンすることで説得力が増し、かえって信頼してもらえます。心理学では、「両面提示の法則」と呼ばれています。