日本人が最も高いポテンシャルを持つ理由

 なぜ、日本人が「勝てる」と思うのか。それは、日本人にその素養があるからである。

図表a:モノに対する4つの態度
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 私が世界中で仕事をしながら感じたところで言うと、世界の人々は「モノに対する態度」によって、およそ四種類に分けることができる(図表a)。これは、2010年のBODW(Business of Design Week)という世界最大のデザインとファッションとイノベーションのイベントが香港で開催された時に話した内容だ。

 世界の人を二つの軸で分けてみる。

 一つ(横軸)は、異質な2つのモノを見た時に、いずれかを選ぶ(A or B)か、選べずに総取りする(A and B)か。この判断には、絶対神を信じるか、八百万の神を信じるか、といった国・地域による宗教観も影響しているだろう。もう一つの軸(縦軸)は、同質のモノが複数あった場合、全部ほしがるか、質素に一つ選ぶか。

 この二軸で、四つのタイプに分かれる。ステレオタイプに当てはめるのはよくないが、およその傾向と思ってみてほしい。

 まず、右上は米国人タイプ。トラックに乗るなら大きいほうがいいし、映画なら『アベンジャーズ』のようにヒットアニメの主人公が複数てんこ盛りで出てくる作品が流行り、一市民の家庭を描く小津安二郎作品などは専門家には激賞されても一般の大勢に受けない。

 その対極が、左下の日本人タイプである。バランスを取るのが好きなので二者択一は苦手だけれども、シンプリファイが好きなので竜安寺の石庭のように引き算の美学を突き詰めていく。このように米国人タイプと日本人タイプは、まったく違うタイプといえるだろう。

 さらに、左上は中国人タイプだ。「AもBもほしいし、何でも多いことはいいことだ」という考え方である。

 そして、それと対照的なのが、英国人やフランス人。一緒にすると英仏双方が怒りそうだが、やはり米国人とは明らかに価値観が違う。シンプルにピュアに突き詰める考え方が好きである。

 非常に面白いのは、隣同士は両方とも割と通じ合える点だ。たとえばプロジェクトに中国人と米国人がいると意見が合うのである。しかし、この図の対角線上同士は、お互いに不思議でわかり合えない、と思っている。米国人と日本人は、あらゆるイシューでかなり違った見方、意見を持っている。

 たとえば、米国人はブレインストーミングなどでアイデアを出し合った後、すぐに投票してどれが一番いいか決めてしまいがちである。でも、それでは本当に革新的なアイデアは生まれない。偶然生まれることはあっても、連続して斬新なアイデアを生むのは難しいだろう。だからこそ、すべての面白そうな切り口だけを集めて構造化し、新たなアイデアを合理的に生み出すSHIFTの方法論を実践すべきであるし、妥協しつつバランスを取りながらシンプルに突き詰める日本人こそが、この方法論の効果を最大化する最強のポテンシャルを持っているのである。

 私は(6/27発売の)本論文集(『SHIFT:イノベーションの作法』)を通じて、大枠で発想するSHIFTの方法をより多くの読者に知ってもらい、実践してほしいと願っている。

剣道や茶道と同じようにSHIFTを究められる

 目下、SHIFTを起こせないのは、まだその方法を知らないからである。

 いままさに発想資本主義に入り、世界にインパクトを与えるようなビジネスを仕掛けるうえで、日本の企業はポテンシャルこそあるのに方法を知らないという惜しい位置にいる。日本の場合、欧州のように侵略を受けた経験もなく、いかに相手を打ち負かすか、またいかに一〇〇年以上にわたって儲かる仕組みを敷くか、といった戦略を大枠で真剣に考えることに、歴史的にも慣れていないためだろう。街づくりなどを見ていても、全体をつくり直すという発想にはならず、弥縫策に陥りがちだ。

 しかし、方法論さえ知れば、日本人は最強である。

 日本人は、剣道にしろ茶道、華道にしろ、すべてにはプロセスがあり、生き様までがプロセスに反映され、そこから何かが生まれると考える。「道」を究めることを良しとする国民性がある。たとえば、日本の家電メーカーでは掃除機一つについて、何時間も楽しそうに語り続ける開発者がいるが、欧米では(最近では風力道を究めたダイソンがいるが)ほとんど見たことがない。このように、道を究めることに喜びを感じる特性がある日本人にSHIFTの方法論を伝えれば、きっとこれを究めようと励み、世界を動かすほどのイノベーションを起こせるだろう。

 ポテンシャルがありながら、実践できないのは罪である。ぜひ果敢にトライしてほしい。