日本の訪問介護を学んだ
中国人起業家の成功

福寿康(上海)家庭服務有限公司CEOの張軍氏
介護ビジネスの若手起業家・経営者として有名な福寿康(上海)家庭服務有限公司CEOの張軍氏  Photo by T.Y.

 現在の中国の介護ビジネスで目立つ大きな流れは、中国政府の後押しを受けた国営企業が中心となって、巨大な敷地を再開開発して大規模な高齢者住宅や老人ホームを開設するというものだ。そこに、見守り装置や遠隔診断装置などIT機器を導入する。大規模なものでは、近代的な「高齢者の街」が整備されるというイメージである。

 その一方で、日本の認知症ケアを見習ったグループホームや小規模多機能などの小規模な施設の開設のほか、デイサービス、デイケア、訪問介護といったビジネスも次々と誕生し、成長しつつある。

 このような傾向は、チャイナ・エイドの展示からも読み取ることができる。

 例えば、上海市内で訪問介護を中心に在宅サービスを展開する福寿康(上海)家庭服務有限公司CEOの張軍氏は、日本で介護ビジネスを学び、起業して成功した最先端の若手経営者として有名な人物だ。現在、従業員3000人、約100ヵ所の拠点を持つ。

 張氏は九州大学のビジネススクールを終了後、日本の物流会社などを経て、訪問介護などを運営する麻生介護サービスで勤務しながら、訪問介護のノウハウを学んで中国で起業した。

「2010年に自分の父親が脳卒中で倒れてから、中国に帰って介護ビジネスを起業したいと考えました。麻生介護サービスでは、社長に『近い将来、中国で起業したい』と頼み込んで勉強させていただきました」(張氏)

日本で推進されている「地域包括ケア」と同じ概念で、ビジネスが展開されている
日本の行政が推進している「地域包括ケア」と同じような概念で、ビジネスが展開されている Photo by T.Y.

 同社のチャイナ・エイドのブースを見ると、日本の行政が推進する「地域包括ケアシステム」(高齢者に対して住み慣れた地域で、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供できる仕組み)を強く意識した模型なども展示されており、日本の訪問介護の仕組みやノウハウの影響を強く受けていることがわかる。

日本の介護事業者が
中国で成功する可能性はあるか

殷志剛氏は上海市の介護のエキスパート
殷志剛氏は上海市の介護の第一人者 Photo by T.Y.

 さて、それでは、日本の介護事業者が中国で成功する可能性はないのだろうか。

 元・上海市老齢科学研究センター主任で、現在は上海市養老業界協会専門家諮問委員会主任、上海養老産業研究センター首席専門家の殷志剛氏は、日本企業が活躍する可能性について、次のように語る。

「日本製の福祉機器、リハビリ機器は優れており、価格的に販売が困難でもレンタルなら可能性がある。

 認知症についても、以前の中国では認知症の知識がほとんどなく、家族も隠そうとする人が多かった。それが高齢化とともに認知症の問題が社会でクローズアップされ、日本のノウハウを学ぼうという中国の介護事業者が増えている。実際に、認知症ケアに適した日本のグループホームや小規模多機能のような小規模介護施設も増えてきている。

 リハビリについては、その評価システムさえもまだ構築されてなく、ノウハウを知りたいというニースは多い。信頼できて、現地の状況に詳しいパートナーを探すことができれば、日本企業にも成功のチャンスはあるだろう」

日本元気集団は大連市から小規模多機能の運営を委託されて実施している
日本元気集団は大連市から小規模多機能の運営を委託されている Photo by T.Y.