IREで実感した米国報道の「熱」
教育問題にどう取り組むか
毎年6月、世界から報道関係者が集まってスキルやノウハウを共有し、モチベーションを高め合う大イベントがある。「Investigative Reporters and Editors」(調査報道編集者協会/IRE)の年次大会だ。
本年、テキサス州ヒューストンで開催された年次大会「IRE19」には、過去最多の1860名が参加した。これは、全会員の約30%にあたる。IREは米国の団体であり、開催地が米国なので、参加者の多くは米国内に在住している。しかし他国からの参加者も多く、毎年100名以上に達している。
私の初参加は2016年だったが、あまりにも濃厚な内容、特に「貧困と教育」「障害」「災害」「気候変動」といったトピックに特化したセッションの内容の深さに感銘を受け、以降、3年連続で参加している。今年は都合があり、4日間の会期のうち最初の2日間しか参加できなかったが「それでも参加してよかった」と感じる。多忙な著名ジャーナリストたちが遠方から、場合によっては他国から「半日だけ」「1日だけ」という形で参加していることもある。意義と価値を認めているからだろう。
今回は、IRE19で「必ず」といってよいほど毎年取り上げられる教育問題から、「教育と不平等」をタイトルとしたパネルセッションと、登壇者の1人であるニューヨーク・タイムズのケイティ・ベナー(Katie Benner)氏らの記事を紹介する。
ベナー氏らが昨年11月から現在にかけて行っている一連の報道は、米国の人々の関心を集め続けている。その報道は、ルイジアナ州の小さな私立校に関するものだ。その学校は、恵まれない貧困地域のアフリカ系の生徒たちを、ハーバード大学をはじめとする名門校に次々と送り込んできた。何が起こっていたのだろうか。