Microsoftは4月2日、電子書籍の販売を中止し、事業を閉鎖すると発表した。これは、このサービスを通じて買った電子書籍は今後読めなくなることを意味し、今回の一件で、同ストアに限らず、電子書籍を利用するユーザーから不安の声が上がっている。そこで、改めてこのような電子書籍のリスクや最新事情をITライターの山口真弘氏に聞いた。(清談社 沼澤典史)
アクセス権を買っている電子書籍
企業の一存で手元からなくなることも
電子書籍市場は拡大傾向だ。MMD研究所が2018年8月に全国2093人を対象に行った調査によると、電子書籍の利用経験者は44.7%と半数に届く勢いだ。さらにインプレス総合研究所は、電子書籍の市場規模について2022年度には2017年度の1.4倍、3500億円程度になると予想している。
着実に市民権を獲得している電子書籍だが、改めて紙の書籍との違いを山口氏に聞いた。
「電子書籍と紙の本の大きな違いは、電子書籍は思い立ったらすぐに購入ができて場所を取らない、持ち歩くのも簡単。またさまざまなデバイスで読めるため、文字サイズや画面の明るさなどを自由に変更できることが挙げられます」
一方、紙の本は長期的な保存や貸し借り、買い取りが可能。電子書籍はあくまでデジタルならではの特性を生かしつつ、割安にすぐ読める利便性の高いサービスであり、その永久保存版が紙ということになる。ただし、電子書籍にはリスクもある。
「購入すれば必ず物理的に手元に残る紙の本に対して、電子書籍はアクセス権を購入しています。DRM(デジタルコンテンツの著作権を管理、保護するために違法なコピーに制限を加える技術)がかかっていない一部の書籍を除けば、電子書籍ストアがサービスを終了すると、読めなくなってしまうリスクがあります。ただ、出版社が直接データを販売していない以上、未来永劫データをダウンロードできるようにしておけというのは、現実的には難しいと考えられます」
電子書籍ストアのほとんどは、このアクセス権をいつでも取り上げられる旨を利用規約に書いている。ユーザーは「もうからないから」という理由ひとつで、本を取り上げられてしまう可能性があるのだ。