ANAは国内航空会社で初めてボーイング777の貨物専用大型機を導入し、成田~上海~シカゴの3国間輸送を強化する。米中貿易摩擦の影響もある中で、アジアの強豪と伍して戦えるだろうか。(ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)

ANAのB777貨物専用機ANAのB777貨物専用機、愛称は「BLUE JAY」。北米に生息する青い翼の鳥(日本名アオカケス)が由来だ。着陸時の衝撃を吸収するため旅客機に比べて約8倍から10倍も底面の強度を高めているのも隠れた特徴 Photo by Rika Yanagisawa

 米中貿易摩擦の乱気流をくぐり抜けて平常運航を維持できるだろうか。ANAは7月2日、国内航空会社で初めてボーイング777フレイター型機(貨物専用機)を導入し、成田~関西~中国・上海~成田線へ就航する。10月末からは米国シカゴにも就航する計画。従来機材より大型かつ燃費の良いB777フレイターを導入することで、輸送量を増強し、3国間貨物の獲得に力を入れる。

 従来のB767フレイターと比較すると、搭載重量は約2倍の102トン、貨物室の高さは約1.2倍の3メートルとなり、B767では搭載できなかった大型パレットが搭載可能になる。精密機械や生体馬など輸送中のケアをするために、管理者が同乗できる座席も設置した。

 搭載容量だけでなく、航続距離もB767に比べて約1.5倍伸び、米国東部までノンストップで就航できる。一方、燃費効率は同規模のB747フレイターと比較すると30%以上改善される。

 B777の導入で、輸送可能な商材の幅が一気に広がる。大きさでいえば航空機エンジンや半導体製造装置が、輸送中のケアでいえば溶剤やインクなどの危険品、血液や医薬品など温度調整が必要な貨物も運べるようになり、多様な輸送ニーズへの対応が可能になった。

 航空貨物マーケットの動向は、アジア~北米の流動が今後20年間で年平均4.6%の拡大成長を見込む。同様に規模として大きく、かつ成長が見込まれているマーケットが欧州~アジアであるが、ここはシンガポール航空やタイ航空が押さえているし、ANAの共同事業パートナーであるルフトハンザ航空がすでにB777を導入していることもあり、ANAは主戦場をアジア~北米に据えた。

 購入価格はカタログ価格(割引を勘案しない定価)で375億円。関係者によると14年度~16年度の中期経営計画策定時から大型専用機の導入を構想し始めた。17年からは米国の運航会社でリース(この時はB747機)を使って顧客を開拓するテストマーケティングを行い、自社運航で採算が取れそうだと判断し18年3月、購入に踏み切った。