差額の3億円はどこへ…?
では差額の3億円はどこにいくのでしょうか。
この詐欺まがいの仕組みは買い手企業も承諾していないと成立しないので、実質的には仲介会社と買い手企業で「山分け」することになります。
買い手企業は3億円の半分、1億5000万円を仲介会社に払い、買収価格の2億円と合わせて3億5000万円で売り手企業を手に入れた計算になります。5億円の価値がある企業を3億5000万円で買収できたのですから、買い手企業にとってはお得な買い物です。
仲介会社は、3億円の半額の1億5000万円を手にします。売り手企業と買い手企業双方から5%ずつの手数料を受け取る通常の仲介会社としての手数料契約に比べると、当初の予想通り5億円で売買が成立していたときに受領する手数料総額5000万円の3倍の金額を手にするのですから、笑いが止まらないはずです。売り手企業だけが、一人で大損したということになります。
ちなみに、仲介会社へ支払う手数料の算式もしっかり確認しましょう。
株式の譲渡対価に対して料率が生じているのか、移動する総資産の金額に料率を乗じているのか、この違いは決定的です。
たとえば、負債10億円を有し、総資産が12億円の会社のM&Aにおいて、株式の譲渡対価が3億円であった場合、手数料が5%とすると、株式の譲渡対価を基準にすると、3億円×5%=1500万円となる一方、総資産額を基準にすると12億円×5%=6000万円となってしまいます。
M&Aの成果は株式の譲渡対価に集約されることを考えると、売り手にとっては、株式の譲渡対価に対する手数料率とするのが合理的です。総資産に対する料金体系となると、手数料が過大になりがちですので、十分留意しましょう。当然ながら、大手企業に対する助言会社の報酬体系は、基本的に株式の譲渡対価が基準となっています。