◎ケース2

生坂:複合的な要因が組み合わさって1つの症状が出ている病気の最たるものは「腰痛」です。慢性腰痛の診断で難しいのは、MRIとかを撮ると異常はあるんですね。ヘルニアとか脊柱管狭窄とか。でも、それだけでは特定の動作に伴う痛みは説明できても、「動作と関係なく痛い」とか「痛み止めが全く効かない」といった、患者さんが抱えている痛みの全部は説明できない。

――ということはつまり。

生坂:やはり身体的な要因だけでなく、心理的、社会的要因が複合的に組み合わさって1つの症状ができているということです。しかもそれらはバラバラに見ると、全部大したことない。メンタルの不調も、社会的なストレスも、腰のヘルニアも。でも全部が合わさると激痛になる。

 だから内科や精神科医、整形外科医が別々に診察しても、腰痛の原因は突き止められないことがある。総合的視点で診て初めて分かるのです。本当に単純に、腰のヘルニアだけの痛みを訴えて私たちの外来を受診する患者さんはほとんどいません。

――腰痛で受診する患者さんは、複合的な原因によるものが多いですか。

生坂:その通りです。人間は、原因が分かっている痛みは我慢できるんですよ、コントロールできるというか。逆に、すぐにでも治療しないといけないような、重症のヘルニア患者さんは受診しない。気の持ちようで、我慢できてしまうんでしょうね。

 受診行動を起こす人は基本的にはメンタルだとか、社会的にいろいろな理由がある場合が多い気がします。

――しかし40代を過ぎれば、誰でも複合的な要因を抱えています。むしろ、病気が1つしかない人のほうが珍しいのでは。

生坂:確かに。高齢になるほど、病気が1つということはありえない。必ず複数の病気を持っています。また若い人でも、実は臓器が侵されて症状が出るだけでなく、メンタルや社会的な要因の影響を強く受けている場合があります。臓器は悪くない、心も健康。だけど家庭や会社など、社会的に追い詰められることで、いろいろ症状が出る。原因不明の、謎の病気ということにされてしまう。

 特に若い人は、心理的あるいは社会的に逼迫(ひっぱく)して、病気になってしまう人が増えています。