FRBの利下げ必要か、経済指標で遠のく合理性
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 米経済をめぐる事実は変化している。だが連邦準備制度理事会(FRB)の考えは変わらないようだ。

 FRBは7月末の連邦公開市場委員会(FOMC)でほぼ確実に利下げを行うと示唆してきた。そのため投資家の議論は利下げの幅や、その次の利下げがいつになるかに焦点が移っている。ところがFRBがハサミを研いでいる間に利下げの理由はどんどん減り、説得力が薄れてしまった。

 16日公表された2つの指標も利下げの根拠を薄くした。まず、米商務省によると6月の小売売上高は前月比0.4%増加し、エコノミスト予想の0.1%増を大きく上回った。燃料価格下落の影響でガソリンスタンドの売上高が2.8%減少していなければ、この数字はもっと強かっただろう。また経済調査会社マクロエコノミック・アドバイザーズによると、4-6月期の消費支出は年率4.3%増になったとみられる。その通りならば2014年以来の大きな伸びだ。

 一方、FRBが発表した6月の鉱工業生産指数では製造部門が前月より0.4%上昇。これにより、先行き不透明な貿易問題や海外経済の弱さを受け、工場が減産を強いられているとの懸念が後退した。

 これに6月の雇用統計の堅調さ、米中貿易摩擦における最近の緊張緩和、最高値を更新した米株式相場を加味すると、FRBが何を悩んでいたのかすぐに思い出せないほどだ。それでもFRBは利下げを予定している。それを断行する論拠は、次の2つの要因にかかっている。

 1つめは、貿易問題での緊張の高まりや世界的な不透明性が経済の足かせとなる可能性はまだあり、それがデータに表れるのは時間の問題かもしれないという点だ。そうであれば保険としての利下げは理にかなうかもしれない。2つめは、物価上昇率がFRBの目標である2%を下回る状況が続き、低インフレが消費者心理に深く根付くリスクが高まっているという点だ。その場合、米経済が物価への若干の刺激を必要としているとは言えるかもしれない。

 しかし、これらがどう転んだとしても、いま利下げに踏み切るのはFRBの過去の行動から逸脱していると思われる。金融市場がいかなる種類の苦境にも陥っていないのは確かであり、米雇用市場が失速し始めた兆しもない。

 1950年代~60年代にFRB議長を務めたウィリアム・マクチェスニー・マーチン氏はFRBの仕事を「パーティーが続いている最中にパンチボウル(お酒)を片付けることだ」と例えた。現在、FRBはむしろアルコールを足そうとしている。

(The Wall Street Journal/Justin Lahart)