心情的に言えば、これは日本側としては主張したい話ではある。昨年の韓国最高裁の判決以降、日本企業の韓国投資はいつ差し押さえられるかわからない脅威に晒されている。このことは、韓国で日本企業の投資保護が十分に行われていないことを意味し、今回の日本の措置以前に、そもそも日韓の経済協力関係が損なわれる事態が発生していることを、日本側としては言いたかったのであろう。

 しかし、今回の貿易優遇措置の解除という安全保障貿易の問題と、徴用工問題がリンクしているかのように匂わせるてしまったことは、韓国政府に反論の隙を与えてしまったし、メディアに対しても今回の措置が報復的な経済制裁というイメージを与えた一因になっているかもしれない。

 日本が経済制裁を行ったという前提に立てば、福永先生の説明はもっともな主張だ。現在では、日本政府の説明は誤解を与えないように細心の注意が払われているが、ネットで情報が安易に、かつ検証なく駆け巡る今の時代、こうした発言は発言者の意図を超えて一人歩きしてしまうものだ。

日本政府に不十分な
国際的な世論形成

 もう1つの問題点は、日本政府の国際的な世論形成、特に外国メディアに対するケアが十分でないことだろう。筆者は今月初めにウォール・ストリート・ジャーナルの記事とNHK「ニュースウォッチ9」に、今回の件についてコメントを寄せた。これらのコメントが日本だけでなく、韓国やさまざまな国のテレビ・新聞などのメディアで紹介されたため、この2週間でかなりの数の海外メディアから取材依頼がきている。

 意外だったのは、韓国のメディアがこの件を日韓の産業・経済の問題として極めて冷静に捉え、韓国政府のように徴用工問題に対する報復のような話に言及しなかったことだ(韓国朝鮮日報は、輸出規制強化や貿易規制ではなく「輸出優遇除外」という言葉を使って今回の措置を報じているのも興味深い)。一方で、欧米系メディアの方が、今回の措置を慰安婦問題や徴用工問題と結びつけて「日本の報復的経済制裁」という前提で質問をしてきた。