自治体のあるべきまちづくりの形として、市民と行政が共に汗をかくことが求められています。市民と行政の連携に加えて必要なのが、市内外の事業者や大学など研究機関との連携です。多様化、高度化する市民ニーズに応え、また、これまでに経験のない新しい取り組みを進める際には、職員や市民だけではなく、事業者や専門家が有する専門性やビジネス面での知見をお借りする必要があるからです。
自治体の構えとして 事業者や専門家を待っているだけでは、具体的な取り組みが実現することはありません。事業者に自治体のことを知っていただき、「話を聞いてくれる」「連携が具体化するかもしれない」という期待感を醸成し、ブランドを築かなければ連携の話すらきません。そのうえで、事業者との信頼関係を深め、双方に有意義な取り組みを具体化できるかどうかが大切です。
私は奈良県生駒市で、市長として日々取り組んでいますが、株式会社モリサワと取り組んだ学校へのユニバーサルデザインフォント(UDフォント)の導入を例に、産学官連携の現場から、課題、解決法、そして成果について解説します。
「学習面で著しい困難を示す」児童生徒4.5%のために
わが国には、「学習面で著しい困難を示す」児童生徒が4.5%いると推定されています(文部科学省調査)。例えば、弱視や読み書きに問題のある子どもには、「文字がにじむ、ゆがむ、反転する」などの困難があり、これが原因となって、学習意欲や学習機会が失われたり、学習内容の理解が不十分となり、自己肯定感が低下する例も少なくありません。
近年、教育現場における合理的配慮に関し、制度上、社会上の要請が高まり、市民意識の変化も相まって、このような弱視や読み書き障害がある子どもたちに対する取り組みが進みつつあります。その1つがユニバーサルデザインフォントです。