大相撲7月場所で大関・貴景勝が全休し、大関陥落となった。本場所の取り組みでけがをして全休しても降格しない公傷制度を復活させてはどうかという声が上がっている。しかし私は反対だ。プロであろうがなかろうが、パフォーマンスの事実で評価されるべきだ。(モチベーションファクター代表取締役 山口 博)

休んでも降格しない
公傷制度復活は必要か

大相撲
休場すれば番付は落ちる。しかし、じっくりとけがを治し、再び落ちたところから実績を積み上げていくのがプロと言えないだろうか Photo:PIXTA

 大相撲5月場所で右ひざを負傷し、休場、再出場、再休場を繰り返した大関・貴景勝が、7月場所を前に、関取との稽古ができない状態にもかかわらず、ギリギリまで出場にこだわり、師匠の千賀ノ浦親方と談判。千賀ノ浦親方は、今回は断固として首を縦に振らず、貴景勝は休場することが決まった。

 休場は敗戦扱いで、貴景勝は2場所連続負け越しとなるので、規定により大関陥落となる。大関昇進後、勝ち越しどころか、1場所も皆勤することなく陥落するという不名誉な記録をつくってしまった。次の場所で10勝すれば大関に返り咲けるという特例はあるものの、5月場所で再出場、再休場したツケは予想通り大きかったと言える(「貴景勝問題、『ギリギリまで頑張る』を美談と考える上司がダメな理由」参照)。

 貴景勝の大関陥落にあたり、公傷制度を復活してはどうかという論調が出ている。公傷制度とは、本場所の取り組みで発生したけがで休場した場合、次の場所で仮に全休しても同じ地位にとどまれるという制度だ。1972年に導入されたが、深刻なけがではないと思われるのに全休するケースが増えて2004年に廃止され、現在に至る。

「公傷制度がないから、力士はけがをしても無理をして出場しようとする」「だから、けがの回復が進まないし、再起不能な事態にもなりかねない」「貴景勝のような真面目で責任感の強い力士はなおさら無理をして出場しがちだ」…こうした考えから、休んだことを負けとみなさないで救済しようというわけだ。貴景勝の大関陥落を契機に、公傷制度復活の気運が高まるかもしれない。しかし、私は反対だ。公傷制度を復活させてはならない。