たとえば、2016年の大統領選挙では、2012年のオバマ大統領支持からトランプ大統領支持に乗り換えた中西部の有権者のうち、約65%が不法移民の強制送還に賛成していた。一方で、民主党のクリントン候補に投票した有権者では、強制送還に賛同した割合は2割程度に過ぎなかった。

 共和党のなかには、減少傾向にある白人に頼った選挙戦略に対して、疑問を呈する声がある。特に2008年、2012年の選挙でオバマ大統領に連敗を喫した直後には、非白人への支持拡大を急務とする意識が強かった。たとえば、いくら共和党が白人に支持されているといっても、少なくともヒスパニックの4割程度から票を得なければ、大統領選挙では勝利できないといわれてきた。

 しかし、2016年のトランプ大統領は、ヒスパニックからの得票率が30%を割り込んだにもかかわらず、白人票の掘り起こしによって、見事に勝利を手にした。その勝利の方程式に、トランプ大統領はこだわっている。

民主党の候補者たちが
黒人票の獲得を競う理由

 白人票に頼るトランプ大統領の戦略は、「打倒トランプ」を至上命題とする民主党の思考にも影響を与えている。非白人票への傾斜である。

 環境問題と並び人種間の平等は、トランプ政権の2年間で、最も民主党支持者の関心が高まった論点である。2019年1月に発表された世論調査によれば、民主党支持者の約70%が人種間の平等を「非常に重要な課題である」と答えている。2016年の調査と比べると、約10%の大幅増である。

 なかでも大統領選挙を目指す候補者が注目するのが、黒人支持者の動向だ。民主党では、2020年の大統領選挙での指名候補を争う予備選挙が本格化している。サンダース上院議員やウォーレン上院議員らの有力候補者たちは、黒人向けの雑誌に寄稿したり、格差や住宅問題で黒人が直面する経済的な課題の解決を提案したりするなど、黒人票の獲得を競っている。

 黒人票への関心の高さを示す象徴的な出来事が、6月末に行われた民主党候補者によるテレビ討論会で起こった。予備選挙の支持率でトップを走るバイデン元副大統領が、厳しい攻撃を受けたのだ。討論会に先立ちバイデン元副大統領は、上院議員時代に超党派の協力を進めてきた実績として、人種差別的な主張で知られた共和党議員たちと協力してきたことを誇らしげに語っていた。