M&Aは買収された後、
3ヵ月から半年くらいが勝負

 M&Aは買収された後、3か月から半年くらいが勝負といわれています。

 売り手企業の従業員は、この先、自分たちはどうなるんだろう、とどうしても不安を抱えます。この間に、買い手企業が売り手企業の従業員に対して一緒に取り組むべき課題や目標を掲げ、一体感を醸成できないと、モラルの低下が生じかねません。
  こうした点からも、買収後の確かな共同生活を送るためには両社での事前の詳細な協議が不可欠。決して軽く考えてはいけないと思います。

 M&Aに携わる業者も乱立していて、目を覆うような場面が多くなっています。

 アドバイザーを務める会社に仲介会社や個人経営の業者から持ち込まれた案件では、次のようなものが実際にありました。

・本当の資金の出し手である実質株主の確認もできていない(後の調査で犯罪収益移転防止法に抵触の恐れ)
・売上の大半が架空売上(口コミでは売れているとは思えなかったため、追跡調査したところ、懇意な取引先への引き取り条件付きでの販売)
・会計帳簿と現金残高が数千万円単位で合わない(オーナーの私的流用)
・脱税の可能性(現金商売における売上過少申告)
・重大なコンプライアンス違反(無許可での営業)

 など、枚挙にいとまがありません。このようなレベルのものは、売り手と契約する業者がM&Aプロセスに入る前にしっかりと見極めなければなりません。

 M&Aの磨き上げによって事前に治癒できたかどうかは難しいところですが、このような案件が持ち回られていることを危惧しています。

 もし、買い手に確かなアドバイザーが付いていないがために、これらの案件を成立させてしまっていたら……考えても恐ろしい状況です。