安全保障面でも大きなメリットがある
日・英・米での「生存圏」形成

 これは、日本にとっても大きなメリットがある。前述の通り、今後の国際社会は「ブロック化」が進み、「生存圏」を築ける国家・地域が生き残る力を持つことになる。しかし、国内に資源がなく、「輸出主導型」の経済システムで生きてきた日本は、「生存権」を持つ国が経済と資源を「ブロック化」してしまったら、一つの小さな島国に落ちてしまう(第145回)。

 安倍政権は、世界の「ブロック化」で日本が抱える「リスク」の恐ろしさを、実は非常によく理解しており、米国の離脱にもかかわらず、TPP11をまとめ上げた(第192回・P.2)。そして、そのベースの上に、米国と英国が加わるのだ。それは日本が、中国、ロシア、EUを上回る巨大な「生存圏」を形成することを意味する。

 そして、日本にとっては経済面だけでなく、安全保障面でも大きなメリットがある。現在、日本は米国から中東ホルムズ海峡などでの安全確保のための「有志連合」への参加を求められている。

 安倍政権がどのような結論を出すかは分からない。だが、少なくともいえることは、英国は「EU離脱」後、英連邦という「生存圏」を強化するために、安全保障面で中東・インド洋から東南アジアへのプレゼンスを強めようとすることだ。現在、英国は「有志連合」への参加を決めていないが、既にペルシャ湾に艦艇を派遣している。英国海軍の中東進出は、米国から日本が求められる日米同盟における日本の役割拡大のプレッシャーを和らげることになるだろう。

 何より、日米同盟が「日英米安全保障同盟」に発展することは、海軍力ランキングで1位(米国)、4位(日本)、5位(英国)が合同する巨大な海軍が誕生することを意味する。このことが中国の海洋進出に対する強いけん制となるのは間違いない(第187回)。

「ドナルド・ボリス関係」があるうちに
安倍首相は2人の間に割って入るべき

 ボリスの首相就任によって始まるかもしれない「日米英同盟」の構築に、安倍政権は早急に動くべきかもしれない。2020年の米大統領選でトランプ大統領が勝利できるかどうか、現状では不透明だからだ。

本連載の著者、上久保誠人氏の単著本が発売されました。『逆説の地政学:「常識」と「非常識」が逆転した国際政治を英国が真ん中の世界地図で読み解く』(晃洋書房)

 米民主党の大統領が誕生すれば、ボリスとの関係がどうなるか分からない。トランプ政権時代の反動で外交政策を大きく変えてしまうだろう。そもそも、民主党の大統領は基本的に歴代「親・中国」であり、日本の自民党政権との人脈が薄いことも問題だ。

 だからこそ、「ドナルド・ボリス関係」があるうちに、日本もできるだけ早くこの話をまとめるべく動くべきなのである。おそらく、安倍首相とボリスも「ケミストリー」が合うと思われる。2人の間に割って入って接待でもゴルフでも、クリケットでも何でもやって、「ドナルド・シンゾー・ボリス」関係を築くべきだ。

 日本では、英国のEU離脱による日本企業のリスクという短期的な話ばかり議論されている。しかし、それだけでは十分ではないだろう。国際社会全体を俯瞰してみながら、中長期的にEU離脱で何が起こるのかを見極めて、日本がどう動くかを考えるべきなのである。

【参考文献】
ボリス・ジョンソン(2016)『チャーチル・ファクター:たった一人で歴史と世界を変える力』プレジデント社