非上場企業の代表として知られるサントリーホールディングスは現在、会長に佐治信忠氏、副会長に鳥井信吾氏という創業者一族が経営の中枢を担う。現在は創業家ではない新浪剛史氏が5代目社長を務めるが、新浪氏のミッションの一つであった米蒸留酒大手ビームとの統合作業を終え、創業家の鳥井信宏副社長が次期社長に就く「大政奉還」が、いずれ行われる見通しだ。
(聞き手/ダイヤモンド編集部 重石岳史)
――新浪さんは三菱商事の元社員で、そこからローソンに行かれ、サントリー社長に就任しました。いわゆる“プロ経営者”として世間で認知されていますが……。
それはまあ、経営者も社員も皆プロですから(笑)。
――新浪さんが経営者として最も大切にしている考え方は何でしょう。
二つあります。一つはローソンに行くとき、すごくいいなと思ったのは「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という言葉です。
43歳になったばかりで1部上場企業の社長になったわけです。そのとき、若いから踏ん反り返るのではなく、やはり偉くなればなるほど頭を下げるんだという戒めですよね。だから加盟店さんに対しては常に僕の方が頭を下げました。
そしてサントリーに来てから佐治(信忠会長)から言われたのは「悠々として急げ」ということ。「急ぐな、でも急げ」と。
だからドシッと構えて悠々と見せていなければいけないんだけど、心や頭の中では急いでいるんですよ。この禅問答のようなことをいつも佐治から言われているんです。