人工透析になるか、ならないかの違いは? 腎機能が急速に落ちていく慢性腎臓病Photo:PIXTA

 人工透析に至る主な原因となる慢性腎臓病(CKD)は、国民の10人に1人がかかっている病気だ。人工透析にならないために、CKDの発症を予防し、発症しても適切な治療を受ける必要がある。

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 埼玉県在住の高橋健司さん(仮名・73歳)が自治体の健診で糖尿病と高血圧を指摘されたのは60歳のとき。「推算糸球体濾過量(以下、eGFR)」は46.7ml/分/1.73平方メートル(以下、単位略)で、尿たんぱくが出ていた。

 eGFRは健康な腎機能を100としたときの指標で、低くなるほど腎機能が悪いことを示す。老廃物の一つである血液中のクレアチニンの値(血清クレアチニン値)をもとに計算する。

 近くのクリニックを受診したところ、高血圧と糖尿病が原因のCKDで、ステージ3aと診断された。そこで治療を開始したところ血圧は下がり、血糖管理の指標であるHbA1cは11.8(%)から6.2、eGFRも52.2まで改善した。

 しかし、3年ほど通院した後、数値がよくなったので薬を自己判断で中止。その後も不定期な服薬を繰り返していた。やがて少しずつeGFRが低下。クレアチニンの値も次第に上昇し、足にむくみも出てきた。このため、73歳のときに東京女子医科大学病院血液浄化療法科教授の土谷健医師を紹介され、受診をした。

 結果は──eGFRが22(ステージ4)まで下がり、尿たんぱくは「3+」と高値になっていた。

 診療した土谷医師はこう話す。

「『人工透析は避けたい』と現在、治療に専念されていますが、きびしい状況かもしれないとお話ししています。治療を継続していたら、と悔やまれます」