「好き」を細分化して分類する

「好き」とは言っても、それだけでは強みとして漠然としすぎです。さらにそれを細かくし内省してみましょう。例えば、サッカーが好きだと言っても、その好きの種類は人によってさまざまです。プレイすることが好きなのか、試合を見ることが好きなのか。選手が好き、ゲームが好き、グッズを集めるのが好きなど、どう好きなのか具体的にしていくことです。

 ボードゲームの場合だと、人と勝負して勝つのが好きな人もいれば、教えるのが好きな人もいる。珍しいゲームを集めることが好きな人もいれば、ボードゲームカフェをつくりたいと思う人もいます。

 僕は、勝敗で楽しむゲームよりも、ゲームの途中、みんなで楽しむことができるボードゲームを好んでやっていました。そして、その楽しんでいる空間がとても心地よく大好きなのです。そのため、ボードゲームに関する職業の中でも勝負を賭けるプロゲーマーではなく、つくったり紹介したりする方向に向かったことは必然でした。

なぜ『人生ゲーム®』が今も流行っているのか

 自分の理念のもととなった、僕なりの考えを説明します。今はテレビゲームやスマホゲーム、漫画などひとりでの時間つぶしに最適なものがあふれています。
 それらは、ボードゲームと比べて、無理に人を集めなくてもいいし、いちいちルールを説明しなくてもいいし、重いゲームのセットを運ばなくてもいいし、会場を決めなくても外でできるし、と誰でも手軽に楽しめます。冷静に考えると、今の時代ボードゲームをわざわざ選ぶ理由がほとんどありません。

 でも、その中で『人生ゲーム®』が選ばれてずっと愛されているのは、ただただゲームをクリアしたいとか、ストーリーが面白いとか、誰かに勝ったとか「個での楽しみ」ではなくて、一緒にいる大切な人たち、仲間、家族と楽しみたい、と思っているからではないかなと思っています。
 ひとりでは体験できない、仲間との感動を分かち合える空間を提供してくれるのが、このゲームの魅力であり、だからこそ、他の強力なエンターテインメントが数多くある中でも生き残っているんだと思います。
 つまり多くの人は、いつも一緒にいる人たちと面白い時間を共有するために「ボードゲームで遊ぶのだ」と、自分の中で思っています。僕がボードゲームをつくってやってもらって一番嬉しいと思う瞬間は「ゲームには負けたけど、面白かった」と言ってもらえたときです。「勝てるゲームは楽しい」「負けるゲームはつまらない」という人がいますが、僕はそうならないようにプロセスを大事にしてゲームを開発することを心がけています。それが、僕がよく言葉にする「感動を分かち合う空間をつくる」という理念なのです。

(続く)