「人間は真実の影を見て生きている」と説いたプラトン

――プラトンの哲学の本質はどのようなものですか?

出口:プラトンは80歳まで生きた長命の人で、さまざまに意見が変化していきます。そのこともあって、何をプラトン哲学の本質であるかを考えることは難しいのですが、一般には「イデア論」であると考えられています。

――「イデア論」とはどういうものですか?

出口:「現実の世界に存在するものは、イデアの影である。物事の真の姿は、別のところに存在する」とする説です。

物心ついてから大人になるまで、首や手足を固定され、地下の洞窟の壁面に向かって椅子に腰かけている人がいたとします。
彼の後方で、明るい火が燃えさかっています。燃えさかる火の前には一本の道があり、そこをさまざまな動物や人間や馬車が通ると、椅子に固定されている人は、眼前の壁面に映る人間や動物の影を真実の姿と考えてしまいます。仮にその人が自由になって、明るい火に眼を向けたとします。火を見た瞬間は目がくらみますが、まぶしさに慣れてくると、影の本体が見えるようになる。そして、「洞窟の中で自分が見ていたものは、実体の影にすぎなかった。自分は影を実体だと思い込んでいた」ことを理解するようになります。

現実のわれわれも、洞窟の中の人と同様の間違いをしていて、「壁に映る影を真実と見誤っている」とプラトンは説いたのです。
これがプラトンの有名な「洞窟の比喩」と呼ばれるイデアについてのたとえ話です。

洞窟の外にある実在の世界がイデアです。考えれば考えるほど、ややこしくなりますが(笑)、「ものごとには本質がある。それがイデアである。われわれが現世で見ているのは本質の模造品である」とするのがプラトンの考え方です。

プラトンについてもっと勉強したい人には、『プラトン『国家』 逆説のユートピア』(内山勝利著/岩波書店、書物誕生あたらしい古典入門シリーズ)をお薦めします。