その映像をテレビで見ない日はないかもしれない。首相の安倍晋三に向かって進む韓国大統領の文在寅。2人は握手を交わすが、それだけ。安倍は文の退席を促す。この映像ほど今の日韓関係を象徴するものはないだろう。6月28日から大阪で開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議での出会いの場面だ。
韓国紙「中央日報」は「韓日首脳は8秒握手した後、背を向けた」と報じた。安倍がG20に出席した米大統領のトランプ、中国国家主席の習近平ら、首脳で個別に会談しなかったのは文だけだった。
双方の不信感の根深さは今も変わらない。それどころか対抗、報復の連鎖が今も続く。安倍の文不信の根底にあるのは、慰安婦問題を巡る日韓合意を文が事実上破棄したことに加えて、元徴用工問題で韓国側が打開策を提示しないことにある。
「国家間の約束を守るかどうかという信頼の問題だ。日韓請求権協定に違反する行為を韓国が一方的に行い、国際条約を破っている。約束をまず守ってほしい」
G20から約2カ月経過した8月6日の広島での記者会見で、安倍は改めて文に注文を付けた。さらに日本政府は2段階に分けて韓国に対する輸出管理を強化する決定を行った。第1弾は7月1日。「レジスト」など半導体の製造に欠かせない原材料3品目を対象とした。韓国はサムスン電子、SKハイニックスなどを擁し、半導体生産のシェアは世界一。これに対し「レジスト」の生産は日本が世界シェアの90%を占める。いわば韓国の急所を突いたのだった。