アプリやネット上の信用スコアは、中国都市部では比較的浸透したサービスだ。アリババグループが開発した信用評価システム「芝麻信用」が、ネットやテレビでも取り上げられているため、その存在を知っている人も多いだろう。アプリの利用状況や購買履歴、ログ情報から、その人の信用度を数値化(スコアリング)し、たとえばネットショップでの優待・割引が受けられたり、空港でも優先レーンや優先搭乗が可能なったり、という恩恵が受けられる。信用スコアが高ければ、銀行融資やクレジットの金利が優遇され、行政手続きがスムースになることもあり、中国では、信用スコアが国民の民度向上につながっているという声もある。

 その一方で、公私にわたる膨大かつ詳細なプライバシー情報が、保存・管理されることへの懸念はぬぐえない。「上級国民」と「下級国民」を選別するしくみを企業や行政に持たせていいのか、といった人権や憲法にかかわる問題は大きい。前述したヤフーのスコアサービスが出だしで躓いたのも、この点に対する配慮がなかったからだ。ヤフー側としては、スコア情報を外部に提供する場合は、個別に許諾をとるが、スコアリングするための情報は、既存の利用規約によってヤフーがユーザーに認めてもらっているとして、問題ないと判断したようだ。

 新しく始めるサービスについて、利用可否や意思確認なしに、既存会員を自動的に信用スコアの利用者に組み入れてしまう設定はあまりに乱暴だ。今どきの消費者リテラシーとしては、頼んでいないサービスや商品を「設定しておきました」「差し上げます」などと、一方的に企業から提供されるようなものは、拒否するのが正解だろう。ユーザーに選択や決定権を与えないサービスは、提供する企業やその関係組織に、なんらかの意図があるものと思った方がよい。

中国「信用スコアの成功」は幻想

 信用スコア・信用経済を推進する側は、クレーマーやドタキャンなど、マナーの悪い消費者の排除や、データビジネスの活性化を主張する。あるいは、クレジットカードやローン審査に利用されている信用調査会社を例に、信用スコアの有効性を説く場合もある。

 ユーザーやサービス提供者の相互評価は、CGM(口コミメディア)、フリマアプリや個人売買、シェアリングサービス(UberやAirb&bなど)といった、シーンが限定されたサービスにおいては有効だ。一方で、包括的、統合的な信用スコアには適さない。既存の信用調査や与信調査データは、融資やクレジットのみに用途が限られているから長年機能しているのであって、与信データを企業の採用や給与査定、行政サービスの選別に利用された場合は弊害が多い。