ただし、データビジネスの場合、個人情報やプライバシーの問題がついてまわる。その管理責任の重さは十分に経営リスクになりえる。産業界からは、プライバシーへの配慮がデータビジネスや新しい産業の成長を阻害しているとの指摘もあるが、個人情報、プライバシーの保護は、グローバルでは基本であり、これを疎かにする企業は生き残れない。データビジネスは、実入りが大きいかもしれないが、安全な管理に対する相応な投資と深い知見とが必要である。

 以前からビッグデータ活用は、産業活性化やオープンデータといった文脈で取り上げられ、ここ何年も各省庁の予算化案件のひとつになっている。近年では情報銀行がその代表例だろう。

 GAFAに集中する個人情報を、国内企業に取り戻すべく、新しい情報共有プラットフォームを官民で整備し、巨大プラットフォーマーに握られているネットビジネスを解放する。安全に個人情報を管理しながら、マーケットデータを国内ビジネスに還元していく。情報銀行には、GAFA以外の個人情報の受け皿となり、国内のデータビジネスを活性化させる目的がある。

 情報銀行が描くこうした理想的なモデルは、GoogleやAmazonに集中する個人情報やライフログデータを情報銀行に集約し、Googleなど他の企業はそこから必要なデータを購入する形をとるという。そうしないと、巨大プラットフォーマーにデータが集中する構造が変わらないからだ。だが、この戦略にはいくつかの欠陥がある。まず、一般消費者や国民が、情報銀行に情報を提供するメリットが明確でない点だ。

 情報銀行は、既存のオンラインサービスやプラットフォームとは別に、消費者から個別にデータを提供してもらい、そのデータを事業者に販売する。消費者は、データを利用した企業から対価をもらえるが、その対価がギフトカードくらいでは大したデータは集まらないだろう。そもそも、報酬が前提のアンケートでは、バイアスのかかったデータ、あるいは報酬狙いの質の悪いデータしか集まらない。

 集まるデータも、ダイナミックな購買履歴やサイトアクセスのログ、サイト遷移、導線といった情報より、住所氏名、職業、学歴、収入などスタティックなデータがメインとなるはずだ。つまり、GAFAが持つような多面的、網羅的な行動履歴やライフログ情報は集まらず、ユーザーの属性、名簿情報的なものが集まるだけだ。あやしい名簿屋を駆逐する効果はあるかもしれないが、これはビッグデータとは言い難い。