シベリア横断鉄道の始発駅Photo by R.Y.

 ウラジオストクにはシベリア横断鉄道の始発駅がある。シベリア横断鉄道はロシア帝国時代の1890年代に建設された、モスクワまで9288kmの世界一長い鉄道である。ウラジオからモスクワまで乗ると6泊7日の旅になるが、隣の都市であるハバロフスクまでなら1泊2日で夜行寝台列車の旅を体験できる。

 ここで注意しなければならないのが、沿海地方限定の電子ビザでウラジオ入りした日本人はハバロフスクに入ることができない点だ。ハバロフスクも観光したければ、従来通りロシア観光ビザを取得する必要がある。

 ロシアにはこの「ビザが州ごとに違う」問題があり、旅行者は不便に感じることが、ままある。現地の報道によると、観光政策を強化中のプーチン政権は、近くサンクトペテルブルクを含むレニングラード州も電子ビザを導入し、21年までにはロシア全土に電子ビザを広げる検討をしているという。

 旅行市場ではウラジオにポテンシャルを見いだしている。「安近短旅行における目新しさではピカイチ。沖縄とも韓国とも台湾とも違う、異国情緒を感じられる」と旅行業界関係者。「見所の大半は市内中心部に集中しているので徒歩で移動可能。2泊3日あれば楽しめる。物価は日本よりやや安いくらいで、治安もいい。若者からシニアまで、興味をひくのでは」と期待する。

 ちなみにダイヤモンド・ビッグ社発行、小社発売の「地球の歩き方Platウラジオストク」(2018年5月初版)の売れ行きは当初想定以上に良く、担当者によると、「Platシリーズ23タイトルのうち、4番手か5番手に付けるスマッシュヒットになっている」。これを受けて19年3月に改定予定だった「地球の歩き方 シベリア&シベリア鉄道とサハリン」を、「極東ロシア シベリア サハリン ~ウラジオストク ハバロフスク ユジノサハリンスク~」という都市名を散りばめたタイトルに変更したところ、改定前のものに比べて2.5倍も売れているという。

 もっとも、「ホテルの絶対数が少ない」「リピーターが生まれるかは疑問」「ANAもJALも直行便を飛ばすなんて、正直びっくり」「夏場はいいが、極寒の冬場に観光客は来ない」といった厳しい声もある。

 ウラジオストクは旧ソ連時代、軍港であり外国人は立ち入り禁止だった。そのような“閉鎖都市”だったため、外資の大手チェーンはほとんどなく、今でも「ZARA」(アパレル)と「バーガーキング」くらいしかない。だからこそローカルな飲食店や雑貨店がたくさんあり、そこが大きな魅力でもある。ホテルはローカルな中級ホテルばかりで、名の知れた高級ホテルとなると、「ロッテホテル(旧ヒュンダイホテル)」くらいである。

 新たな名所として、(サンクトペテルブルクにある国立美術館で世界遺産でもある)エルミタージュ美術館の「分館」をつくる計画や、2つのハイアットホテルの開業プロジェクトもあるが、どちらもスムーズに進んでいない。

 韓国や台湾、沖縄も長い年月をかけて人気旅行地に育った。さて、ウラジオストクもリピートしたくなる観光都市になれるか。ANA、JALは寒々しさではなく、熱い戦いを繰り広げられるだろうか。