新ハワイ対戦Vol.2

ANAはコロナ禍で運休していた成田~ホノルル線の定期運航を7月1日から再開する。JALとのハワイ戦線を変えるため、エアバスA380を「空飛ぶウミガメ」にして導入したANAだが、超大型機ゆえ、集客が最大の課題だ。座席を埋められなければ高額な固定費が負担となって赤字必至。どのように安定した収益を稼ぐのか。(ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)

※本記事は2019年7月23日に公開した「JAL vs ANA 新ハワイ対戦」特集の再掲です。数字や人物の肩書は当時のまま

JALのホノルルマラソンを意識して音楽祭開催
ファーストクラスに乗る富裕層にアプローチ

 全日本空輸(ANA)はハワイで音楽祭を始める。イベント名は「ホノルルミュージックウィーク」。今年は11月15~17日の3日間、ハワイのオーケストラや人気バイオリニストなどをゲストに迎えて、大規模会場からショッピングモール内の小スペース、公園など複数会場で開催する。

「最初の構想はクラシックのコンサートを開催することだった。いわゆる富裕層のお客さまに対して、ハワイに行く新しい目的をつくれないかと思った」

 ANAが昨年4月に新設した部署、ファーストクラスマーケティング&セールスの宮紳介シニアディレクターは、イベント企画のきっかけをそう語る。

 5月に導入した超大型機A380ではホノルル線で初めてファーストクラスを設けた。他の国際線のファーストクラスはビジネス出張路線であるため乗客は大手企業のトップなどで、法人営業部が秘書を訪問している。

 ホノルル線のファーストクラスは「マーケットもターゲットも違う」(宮シニアディレクター)。個人企業オーナーや会社のファウンダー、病院経営者などが休暇でハワイを訪れる。富裕層にアプローチする中で、浮かび上がったのが音楽イベントの開催だった。

 社内で話が進むにつれ、グッドアイデアはハワイ線全体の営業施策の柱になった。

「クラシックをメインにしつつ、もう少し幅広くやろうと。単に日本の富裕層をもてなすだけじゃなくて、現地のコミュニティーを巻き込んで、音楽をフックにした日本とハワイの懸け橋をつくりたい」と宮川純一郎・上席執行役員営業センター長兼ANAセールス社長は言う。

 ホノルルミュージックウィークは来年から本格的に開催し、多様なアーティストを招く。ANAが2月に路線を開設したウィーンから、超有名オーケストラを招聘する案もある。

 意識するのは「JALホノルルマラソン」だ。ホノルルマラソンは日本航空(JAL)が1984年(第12回大会)にスポンサーとなって以降、約3万人が参加するハワイの一大イベントになった。54年からホノルル線を飛ばすJALの知名度を盤石にし、リピーターの創出、顧客の囲い込みにも大いに貢献している。

 ANAもこの音楽祭をハワイの新しい名物に育てて、「ハワイといえばJAL」の概念をひっくり返そうとしているのだ。

コンセプトコンセプト今年は11月15~17日の3日間、来年からは1週間のイベントを展開する予定。ANA主催ではなく早期にNPO化し、ANAを含めて企業から協賛を募る計画。現地のミュージシャンとコラボレーションするなど、ハワイ州と一丸となって名物イベントにしていく