薬物療法や神経ブロック療法によって
ぎっくり腰の9割は治る!

 さて、ご相談者さまの質問にお答えしたいと思います。

 まず診断についてですが、「画像検査で障害部位を特定できない腰痛は85%を占める4)」という有名な論文の報告があります。

 しかし、その一方で、日本の整形外科医が腰痛を診察すれば、78%診断できる、つまり障害部位が特定できない腰痛は約2割まで低下するという報告もあります5)。海外と比較すると非常に優秀なのが、日本の整形外科医なのです。

 ですから、ぎっくり腰になったら、まずは整形外科、またはペインクリニックを受診し、しっかりと診断してもらうことが大切です。

 検査を行い診断がつけば、治せるものなのかどうか、治すのにどのくらいの期間が必要なのか、おおよその予測がつけられるからです。

 次に治療についてです。

 私の同僚のように腰椎椎間板ヘルニアであっても、手術を行わずに治るケースも多くあります。十分な薬物療法や神経ブロック療法によって、3分の1は2週間で、90%は4~6週間で改善するといわれています6)

6週間以上、痛みが続くなら
手術を検討してみる価値あり

 こうしたことから、手術は6週間以上症状の改善がない場合に検討すべきと考えられています。そして、手術後は、85~90%はすぐ、遅くとも1ヵ月以内にヘルニアによる痛みは改善すると報告されています6)

 従いまして、診断にもよりますが、まずは薬物療法や神経ブロック療法を行い、痛みの推移を経過観察するのがいいのではないかと思います。

 ペインクリニックは、あまりよく知られてはいませんが、痛みを専門とした診療科で保険がききます。

 整形外科は、腰痛に対して薬物療法のほか、手術療法を行うことが専門です。一方ペインクリニックでは、薬物療法と手術療法の間をつなぐ治療を、神経ブロック療法を用いて行っていきます。ですので「痛みはあるけれど手術はまだ考えていない」「手術はできないと言われてしまった」「手術を受けたけれど、また痛くなってしまった」という方が、よく受診されます。

 今回の「経皮的椎間板摘出術」(PD)治療も、通常の内科や整形外科と同様に保険診療が可能です。行う検査や処置、入院日数にもよりますが、3割負担の保険を用いた場合、10万円前後の負担と考えておけばいいと思います。収入、金額により「高額療養費制度」の対象にもなりますので、病院窓口で相談してみてください。

【参考文献】
4)Deyo, R. A.,et al. Low back pain. N Engl J Med 2001; 344: 363-370.
5)Suzuki H, et al. Diagnosis and Characters of Non-Specific Low Back Pain in Japan: The Yamaguchi Low Back Pain Study. PLoS One 2016; 11(8): e0160454.
6)Delgado-Lopez PD, et al. Lumbar disc herniation: Natural history, role of physical examination, timing of surgery, treatment options and conflicts of interests. Neurocirugia (Astur). 2017; 28(3): 124-134.

小林玲音

小林玲音
昭和大学病院 麻酔科 助教

東京都出身。2005年に昭和大学医学部を卒業し、2007年より同大学麻酔科学講座に在籍。また、2011年同大学大学院(博士課程)にて学位取得。手術室での麻酔管理の他、ペインクリニックにも従事し、痛みに対する神経ブロック療法、できるだけ体に傷を残さずに治療するインターベンショナル治療の研究に携わっている。