糖質中毒を抜けた先にあるもの…

 ダイエットから少し話がそれるが、糖質を摂ることで血糖値が上がることに一番敏感なのは、やはり糖尿病をわずらってらっしゃる患者さんだ。

 そもそも、私が2週間試用させていただいた、血糖値のトレンドを可視化する器具「リブレ」は糖尿病の患者さんのために作られたもの。患者さんには、血糖値の変動を70~140の間に留めるような食生活が要求される。

 リブレの数値を見て、患者さんは自分自身の身体のことだから文字通り懸命になって数値を下げようとする。あまり知らない部外者が「これ食べて、多少血糖値上がっても関係ないでしょう?」などと言っても、本人が必死になってそれに抵抗する。

 そうして数年後、目標の数値で安定し、「少しだったら、もう食べていいですよ」と牧田先生が患者さんに許可を出しても、首を振って「もう慣れました。あれだけ好きだったものも、こんなに長く食べないでいるとどうでもよくなりました」と漏らされるのだとか。

 しかしその心境、今の私なら、なんとなくわかるような気がする。波もあるのかもしれないが、最近は糖質への欲求から気をそらせるための酒も、串焼きも、以前ほど食べたいとは思わず、仕事帰りは外食せずに豆腐と買ってきた惣菜で済ませることが苦でなくなった。

 また、昼食も現場近くのスーパーで100円のサラダ、30円のドレッシング、120円のアジフライ、そして3パック100円もしない絹豆腐で十分満足。朝、時間があるときは納豆にパックのメカブを混ぜて、それで豆腐をいただく。

 このところ、3食豆腐で満足できるし、特に朝は納豆、メカブ、小さな豆腐でさえ、一度に平らげることができない。食べる量自体以前に比べて少なくなってしまった。

 筋トレは週2~3度はやっているので、少しずつでも新たに筋肉はついているはずだが、こんな感じである。かつては健啖家(おおぐい)で鳴らした私も、今となっては「なぜ、あれほどまでに狂おしく、がっついてたくさん食べていたのか」よくわからなくなってきた

 多分、老化ではないと思う。本当に、中毒めいたところが抜けてしまったのだろう。

 ただ、そこに至るまでは、気をまぎらわせるための何かの存在が重要になるだろう(ものすごく悪く言えば、別の依存先)。

 私も、禁断症状がピークだったころから、それらがおさまってもしばらくは、麻婆豆腐、焼き鳥、モツ焼き、そしてハイボールや焼酎などでよくごまかしていた。

 牧田先生も、この日おっしゃっていた。「糖質制限のダイエットが成功するのは、酒に強い人、酒を飲む人です。酒を飲まない人はたいてい甘いもの好き」と。初期状態で甘いものが好きだし、代わりになりうるお酒という手が使えないからだろう。

 あと、そのとき思ったのは、おそらく何かの中毒になっている人は、摂ったときの多幸感と、切れたときの飢餓感の間を行ったりきたりしつつ、そこから抜け出すことことなんて考えさえもしないんじゃなかろうか、ということだった。

 ただ、減量と健康に対する強力な意思がもしあったとしたなら、運動に快楽を見いだして、甘いものを断ち、酒にも逃げずにストレスを運動で昇華させるということも可能かもしれない。

 そこまでの境地には至っていないが、私も昼休み、公園での筋トレが別段苦でもなく、むしろ楽しく継続できている。おかげで、以前に比べて朝の通勤列車に間に合わせるためのダッシュ、駅での階段1段抜かしなどを軽々こなすまでになった。もともと運動をされていた方なら、こうした方向性での「若返り」はより一層容易となるだろう。

 さて、次回は牧田先生へのインタビュー、後編。『医者が教える食事術』シリーズ、もうひとつのテーマである、終末糖化産物(AGE)の話を中心にお送りしたい。