P/Lでは1億円の利益を計上しているのに、
なぜ、4億5000万円のキャッシュが減ったの?

 そうして5月10日の午後、早苗は会議室で吉田の説明をうけていた(下図表)。

 

会社のお金はどこからきて、どこへ消えるのか?


 「……以上のように、
 ・営業キャッシュ・フローがマイナス4億5000万円
 ・投資キャッシュ・フローがマイナス5000万円
 となっており、それをカバーするため、
 ・銀行からの借り入れを増やし、財務キャッシュ・フローがプラス2億円
 となっています。その結果、1年前に比べて、3億円のキャッシュが減っています」

 「つまり、P/Lでは1億円の利益を計上しているけど、C/Fで見てみると営業活動で4億5000万円のキャッシュが減ってしまったということですか?」

 「はい。そのようです……」
 吉田の回答の歯切れが悪い。

 早苗には、初めて見るC/Fは分からないことだらけだ」
 (やっぱり、先輩に相談してみよう……)

 つづく

相馬裕晃(そうま・ひろあき)
監査法人アヴァンティア パートナー、公認会計士

1979年千葉県船橋市生まれ。
2004年に公認会計士試験合格後、㈱東京リーガルマインド(LEC)、太陽ASG 監査法人(現太陽有限責任監査法人)を経て、2008年に監査法人アヴァンティア設立時に入所。2016年にパートナーに就任し、現在に至る。
会計監査に加えて、経営体験型のセミナー(マネジメントゲーム、TOC)やファシリテーション型コンサルティングなど、会計+αのユニークなサービスを企画・立案し、顧客企業の経営改善やイノベーション支援に携わっている。年商500億円の製造業の営業キャッシュ・フローを1年間で50億円改善させるなど、社員のやる気を引き出して、成果(儲け)を出すことを得意としている。
著書に『事業性評価実践講座ーー銀行員のためのMQ会計×TOC』(中央経済社)がある。MQ会計を日本中に広めてビジネスの共通言語にする「会計維新」を使命として、公認会計士の仲間と「会援隊」を立ち上げ活動中。