最優先はホームスタジアムの確保
ハイブリッド芝に期待

川淵三郎氏が語る「ラグビー界の怠慢」と清宮改革への期待かわぶち・さぶろう/1936年生まれ。元サッカー日本代表。Jリーグ初代チェアマン。2015年には日本バスケットボール協会の会長に就任。現在はボールゲーム9競技の運営活性化を目指す日本トップリーグ連携機構の会長 Photo by K.K.

──清宮副会長にお会いになったそうですが、どんなアドバイスを?

 一番の問題はスタジアムの確保。ホームタウンとスタジアムがないと成功しない。サッカーと併用してスタジアムを使わせてもらえないかという交渉を、率先して進めたいと言っていたね。

──W杯開催に当たって、新設のスタジアムは釜石だけです。

 僕は切歯扼腕、森さんもそう思っておられるけど、後悔先に立たず。ラグビー専用のスタジアムは、新設の釜石を含めても、熊谷、花園の三つだけ。秩父宮を大きく建て替え、世界に冠たるラグビー場ができると思っていたのに、そうではなかった。W杯開催が10年前に決まっていたわけだから、この辺はラグビー界の大きな怠慢だと思うね。

――とにかくスタジアムが大事。

 日本には、観客にとって居住性が良く、物販や飲食を含めて、そこに行けば楽しいと思えるスタジアムが、ほとんどない。ラグビーも将来は自前のスタジアムを造ってほしい。従来は箱物を造って、赤字を垂れ流すケースも多かったが、今は黒字を確保しながら地域を発展させる時代。プロ野球もDeNAやソフトバンクは黒字で、日本ハムも自前で稼ぎたいということでスタジアムを変えるわけでしょ。自前だからこそ、できることがたくさんある。

――確かに、スタジアム改革を進めるプロ野球を含め、プロスポーツの観客動員が好調です。

 まだ、欧米諸国に比較すると、スポーツの位置付けは低く、チケット代金も安い。レアル・マドリードに移籍したサッカーの久保(建英)をFC東京で見るには、チケット単価を上げて彼の年俸を飛躍的にアップさせる。だから日本に残ってくれよという話になる。世界一流のオペラやオーケストラには高いお金を払えるのだから、日本人であっても、一流の選手であれば、それ相応の入場料金を払わないといけない。そのためにも、魅力的なスタジアムの建設を……と繰り返し強調している。

──サッカーと共有する場合、芝生の問題があります。

 今はハイブリッド芝のスタジアムが世界的にも増えて、今度のW杯でも神戸や横浜はハイブリッド芝。僕としての希望的観測だが、ハイブリッド芝ならラグビーをやっても芝が傷まずに、サッカーと共有できるという結論が出たら、すごくプロ化がスムーズにいく。