ECBのマイナス金利深掘り、真の狙いとそのリスクPhoto:Reuters

 欧州中央銀行(ECB)は12日、一向に上向かないインフレ率を押し上げるため、再び大規模な金融緩和策を発表した。だが、真の狙いは違うところにあると疑われている。ユーロだ。

 ECBはマイナス金利の深掘りとともに、資産買い入れ策を再開すると表明。発表を受けて、ユーロは対ドルで0.4%値下がりした。ECBは特定のユーロ相場水準を目標にはしていないが、通貨高が物価を下押しするとの懸念から、金融政策においては為替レートも焦点となっている。

 プリンシパル・グローバル・インベスターズの首席ストラテジスト、シーマ・シャー氏は「これ(ユーロ相場への配慮)は今まで以上に重要だ」と語る。「金利はすでに極めて低水準にあり、利下げしてもあまり大きな影響はなく、かえって逆効果となるリスクもある。では、なぜそこまでして利下げするのか? 単純にユーロ相場をターゲットにするためだ」

 だが、それが目的なら、成功には代償を伴うかもしれない。ユーロは過去およそ1年半、対ドルで下落しており、ユーロが一段安となれば、ドナルド・トランプ米大統領の怒りを買い、米国との貿易関係が損なわれかねない。トランプ氏はこの日、ECBは「ユーロを極めて強いドルに対して下落させようとして成功を収めており、米国の輸出に打撃を与えている」とツイートしている。

 ECBは中銀預金金利を10ベーシスポイント(bp)引き下げマイナス0.5%とし、月額200億ユーロ(約2兆4000億円)の資産買い入れを「必要な限り」行うと発表した。

 ECBはインフレ率が低水準にある上、なお低下しているため、なんらかの手を打つ必要があった。7月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)は前年同月比1%上昇と、ECB目標の半分の水準にとどまる。だが複数の理事会メンバーはこの日の理事会を前に、一段の資産買い入れの必要性について疑問を呈していた。欧州では、金利はすでにマイナス圏にあるものの、政治的に利下げの方がハードルが低い。