キャッシュ・フロー計算書は、
会社の活動別にお金の流れを把握するためのもの

 「C/Fは、この活動別にお金の流れを把握するためのものだ。『財務活動によるキャッシュ・フロー(財務CF)』は、株主や銀行からお金を集めたり、返済をする活動で、主にB/Sの右側(負債・純資産)に関係する。『投資活動によるキャッシュ・フロー(投資CF)』は、工場の設備投資や株式などの有価証券の取得する活動で、主にB/Sの左側(資産)に関係する。『営業活動によるキャッシュ・フロー(営業CF)』は、肝心の本業でキャッシュを稼いだかどうかに関係する活動で主にP/Lに関係しているんだよ」

 「概念はなんとなく理解できましたが、そもそもC/Fの見方がよく分かりません」

 「C/Fをよく見てごらん。分からないのは、営業CFの項目だけだろう? 投資CFと財務CFは、特に難しいところはないんだよ」
 早苗はC/Fをあらためて見た。

 たしかに投資CF、財務CFの項目は、固定資産の取得、借入金の増加・減少などだ。分からないのは営業CFの見方だけである。

 「営業CFには『直接法』と『間接法』の2つの表示方法がある。このC/Fは間接法だ。表示方法が違うだけだから、直接法も間接法も営業CFの金額は同じになる」

 「間接法? ということはお金の動きを間接的に表示しているんですか?」

 「そうだ。直接法は営業収入、仕入支出や給与の支払いなど営業に関わる収入と支出を直接的に把握する方法だ。一方の間接法は、P/Lの当期純利益と同じ金額だけお金が入ってきたと仮定して、損益と収支の間で生じるズレを調整していく方法だよ」

 「へー。なんか聞いたかぎりでは、直接法のほうが分かりやすそうですね?」

 「直接法は素人でも分かりやすい。ただ作成するのにとても手間がかかる。間接法はB/SとP/Lがあれば作成できるから、実務上では圧倒的に間接法を採用している会社が多いんだ。間接法は、P/Lの利益と営業CFとの差異が明確になるというメリットもあるし、繰り返し見ていればそのうち分かるようになるよ」
 早苗は、「はぁ」と自信なさげに答えた。

 つづく

相馬裕晃(そうま・ひろあき)
監査法人アヴァンティア パートナー、公認会計士

1979年千葉県船橋市生まれ。
2004年に公認会計士試験合格後、㈱東京リーガルマインド(LEC)、太陽ASG 監査法人(現太陽有限責任監査法人)を経て、2008 年に監査法人アヴァンティア設立時に入所。2016年にパートナーに就任し、現在に至る。
会計監査に加えて、経営体験型のセミナー(マネジメントゲーム、TOC)やファシリテーション型コンサルティングなど、会計+αのユニークなサービスを企画・立案し、顧客企業の経営改善やイノベーション支援に携わっている。年商500億円の製造業の営業キャッシュ・フローを1年間で50億円改善させるなど、社員のやる気を引き出して、成果(儲け)を出すことを得意としている。
著書に『事業性評価実践講座ーー銀行員のためのMQ会計×TOC』(中央経済社)がある。MQ会計を日本中に広めてビジネスの共通言語にする「会計維新」を使命として、公認会計士の仲間と「会援隊」を立ち上げ活動中。