老後資金について考える際に重要なのは、「運用で稼ごう」などと欲張るよりも、リスクを避けることである。その中で最も考える必要があるのは、長生きとインフレのリスクだ。(久留米大学商学部教授 塚崎公義)
老後の安心のために
「保険」をかけよう
突然だが、火災保険に加入するのは、家が焼失して住むところがなくなると困るからである。つまり、「非常に困った事態を避ける」のが保険の目的だ。
この場合、火災が起きなければ保険料は損になるが、誰も「火災が起きなくて保険料がもったいなかった」とは言わないだろう。それが保険というものだ。
老後資金に関しても基本的な考え方は同じで、ひどい目に遭わないために「保険」をかける必要がある。これは何も保険会社と保険契約をする、という方法に限らない。
最も備えるべきリスクは
「長生き」と「インフレ」
長生きは素晴らしいが、老後資金のことだけを考えるならば、長生きはリスクになる。現役時代に多額の老後資金を蓄えても、長生きしている間に少しずつ取り崩していけば、老後資金が底を突いてしまうかもしれない。
もう1つの大きなリスクは、インフレである。多額の銀行預金があっても、インフレになれば預金が「目減り」してしまう。同じ金額の預金で買える物(財およびサービス)の量が減ってしまうからだ。
最も困った事態は「長生きしている間にインフレになって老後資金が底を突く」ことであろう。今回が2回目となるシリーズ「初心者のための『老後資金』対策講座」の最大のテーマは、この長生きとインフレのリスクにいかに対処するか、である。