【バロンズ】動画配信業界、真の勝者は誰だPhoto:123RF

AT&Tが自社グループ保有の番組
「ビッグバン・セオリー」の配信権を高値で落札

 昔のテレビ番組を期限付きで動画配信する権利を高額の対価を支払って手に入れる競争が激化している。先週AT&T(T)は、傘下のワーナー・ブラザース・テレビジョンが制作した高視聴率のコメディ番組「ビッグバン・セオリー」を、高値を付けて自社で落札した。同番組は、同じくAT&T傘下で動画配信サービスを展開する予定のHBO Maxに適した素材だ。唯一潜在的な問題として残るのは、ケーブルネットワークTBSだ。同社は「ビッグバン・セオリー」の再放映権を保有しており、そう、同じくAT&Tの傘下にある。

 懸念事項は何か。一つは利益の分配権だ。「ビッグバン・セオリー」の共同制作者であるチャック・ロリー氏は、ストリーミング再生と再放映から得られる収入の30%から40%を受け取る権利を持っているとされる。AT&Tが自社に都合の良い条件で取引をすれば、ロリー氏の弁護士にAT&Tの自己取引として問題にされる可能性があった。このため自社グループに厳しい取引条件を課し、HBO Maxの5年間の国内配信権に6億ドルの値を付け、加えてTBSの再放映権も延長を決めた。

 AT&Tは少なくともHBO Maxの定額契約料収入全体で利益を上げるつもりなのだろう。そのためには正しい価格設定をする必要がある。筆者の計算が正しければ、月額13ドルを十分に下回ればネットフリックス(NFLX)やウォルト・ディズニー(DIS)に対抗できるが、既存のHBOが使用するケーブル会社との契約に違反しないようにするためには、最低でも月額15ドルにする必要がある。物言う株主エリオット・マネジメントが、AT&Tには明確なテレビ戦略がないと主張していることも考慮に入れなければならないだろう。