住宅街「空き家率が上がっている」という話をよく耳にしますが、実際には減少している。それによって、都心部に様々な影響が出そうだ(写真はイメージです) Photo:PIXTA

空き家率の落とし穴
増えるどころか減っている

 東京都における空き家率の減少が明らかになった。5年前の10.9%から10.4%に0.5%下がったのだ。たった0.5%と思われるかもしれないが、これまで5年ごとに1%ずつ上がってきた経緯を見ると、逆回転の様相を呈している。

 これを証明するように、家賃は値上げされているのが現実であり、消費者物価指数の家賃においても、平均築年が古くなりながらも値上げしている実態が明らかになっている。

 長期的な空き家率の上昇と将来における一層の悪化、というイメージは描きやすい。なぜなら、日本の総人口はすでに減少しているにもかかわらず、空き家率が高止まりしている上に、新規着工戸数は毎年100万戸弱あるからだ。素人考えでは、単純に住宅ストックは今後も余り続けるに違いないと思えるだろう。

 しかし、そうだとすると冒頭の空き家率の減少は到底説明できない。計算上、漏れている要素が2つあるからだ。

 1つはストックが減ることの考慮だ。実際、耐用年数を過ぎる住宅ストックは毎年3%以上ある。木造で22年、鉄筋コンクリートでも47年なので、毎年同数の供給があれば、木造ストックの4.5%(=1/22)、鉄筋コンクリート造の2.1%(=1/47)が耐用年数を過ぎていくことになる。

 このため、以前から「スクラップ&ビルド」と呼ばれ、新築の一定割合は既存の住宅が壊されて建てられていた。この5年間で新規着工戸数は466万戸あったにもかかわらず、住宅総数は180万戸しか増えていないため、毎年約60万戸平均でなくなっている計算になる。これは、約6000万戸のストックの1%に相当する。