こう話すのは、心療内科医の梅谷薫氏。のべ10万人あまりの診療にあたってきたベテラン医師だ。医学的に「恋愛依存症」という言葉はないが、恋愛依存や嗜癖の状態に陥る可能性はあるという。

 ちなみに、嗜癖とは何だろうか。大まかに「2つの要素から特徴づけられる」と梅谷氏は言う。

「2つの要素とは『耐性』と『退薬』です。耐性は、同じ量の薬物や行為で満足できなくなること。お酒の量が増えるのはこの現象です。退薬は、いわゆる『禁断症状』。薬や行為が禁止されると強い渇望を訴える状態です。この2つがあると『嗜癖』と考えられます」

 恋愛は、嗜癖になり得る可能性が「十分にある」という。つまり、2つの要素を満たしているということだ。

エスカレートと禁断症状
恋愛には2つの要素がある

 そもそも、恋愛自体が耐性と退薬の両面を持つ嗜癖の行為だという。その内訳を梅谷氏が説明する。まずは耐性について。

「恋愛は、お互いを意識するところから始まって、言葉やメールを交わし合い、デートやセックスにまでヒートアップしますよね。これは恋愛ホルモンによる『行為のエスカレート』ではないでしょうか」

一方の退薬についても、梅谷氏はこんな見解を述べる。

「恋愛中は、相手に会えないなどの非常に苦しい失恋をすれば、精神的に大きなダメージを負います。行為や関係が失われることで強い禁断症状が出るといえるでしょう」

 ただし、恋愛において相手に熱中したり、失恋で大きく落ち込んだりすること自体は問題ないという。「恋愛は、生物学的にも必要な行為なので、一般的なレベルの感情の起伏は許容範囲と考えられます。『依存』は本来、生命維持に必要なプロセスなのです」と梅谷氏。

 しかし、それがエスカレートして、自分でコントロールできない状況、社会的・人間関係的なトラブルにつながるようなら問題である。恋愛という行為に関する「依存症」や「嗜癖」という、「病的な状態」と判断されるのだ。