日本全体がカジノ実施に向けて動き出した中、いまだ議論が尽きないのがギャンブル依存症の問題だ。2022年度実施予定の新学習指導要領では、高校保健体育に「依存症の予防と回復」が盛り込まれるなど、若年層への啓発・教育に向けての助走も始まっている。カジノ産業と若者の関わりを探るシリーズ企画の第6弾は、ゲーム依存に触れつつ、ギャンブル等依存症を取り巻く問題を掘り下げていく。(清談社 松嶋千春)
10年前は無名だった
ギャンブル依存症
2018年7月、IR(カジノ等を含む統合型リゾート)実施法成立とともにギャンブル等依存症対策基本法が可決している。同法では、ギャンブル等依存症を「ギャンブル等(公営競技、パチンコ屋に係る遊技その他の射幸行為)にのめり込むことにより日常生活又は社会生活に支障が生じている状態」と定義。2017年の厚生労働省研究班調べでは、「ギャンブル依存症が疑われる状態になったことがある」という人は成人男女の3.6%(約320万人)という数字が出た。
依存症回復支援を行う民間団体・一般財団法人ワンネスグループの三宅隆之さんによれば、ギャンブル等依存症は“病的賭博”や“ギャンブル障害”とも呼ばれ、精神疾患のひとつとして分類されている。アルコールや薬物とは違い、身体に直接影響を及ぼすものではないがゆえ、これまで顕在化してこなかった側面があるという。
「約10年前は、アルコール依存症専門の医師ですら『ギャンブル依存症なんて聞いたことがない』という状況でした。2016年に施行されたIR推進法での議論を受け、ここ2~3年でやっと光が当たりだし、医療機関での受け入れが徐々に増えてきたところです」(三宅さん、以下同)