この他、グローバルな人材活用を進めるために人事制度も見直す。当面は本部長クラスなどの幹部に限るが、ポジションごとの職務や役割を定め、そのポジションの市場価値に見合う報酬を支払う。人事異動は公募制を基本とする。
このように、時田社長は社員の服装など表層的なことだけではなく、会社の体質を抜本的に変える施策も打っている。
しかし、である。それらの打ち手で、デジタル事業で先行する米アクセンチュアや日立製作所などに追い付くのは難しそうだ。
富士通の新たな経営方針に期待が持てない理由は大きく二つある。
第一は、デジタル事業での出遅れを挽回するにはスピードが重要なのだが、事業の成長に関する目標が物足りない点だ。
富士通の成長分野である「デジタル領域」の年平均成長率は12%に設定されている(売上高は19年度9500億円の見込み。これを22年度1兆3000億円に増やす計画)。
単純比較はできないが、日立が成長分野に位置づけるデジタルソリューション「ルマーダ」で目指す売上高の年平均成長率は17%で拡大のスピードは富士通より速い(ルマーダの売上高は18年度1兆1700億円。これを21年度1兆6000億円に増やす計画)。
利益率でも大きな差がある。
富士通の「デジタル領域」を含むセグメント「テクノロジーソリューション」の18年度営業利益は4.4%。一方、日立の営業利益はルマーダを含むITセグメントで10.9%だ。アクセンチュアに至っては、同年の営業利益率が14.8%となっている。富士通が目論見どおり22年に同営業利益率で10%を実現してもなお、競合を上回るのは簡単ではない。