数値目標の定義が不明瞭
富士通の新たな経営方針の第二の弱点は、数値目標が不明確なことだ。
「デジタル領域」の売上高目標3000億円にはソリューションの提供にともなって売れる通信機器などのハードウエアも含まれる。それだけではなく、従来のレガシーシステム(顧客の要望に応じて作る基幹システムなど)のリプレイスさえ計上されている。
つまり、富士通が伸ばそうとしている「デジタル領域」には、これから成長させるべきソリューション事業だけではなく、従来のレガシー事業が含まれているということだ。
記者が説明会で「創出する3000億円の売上高からハードウエアなどを除いた純粋なソリューションやソフトの割合」とたずねたところ、時田社長は「答えられないが、ハードは若干入る」と述べただけだった。
これでは、売上高目標が達成されてもその意義は不明確、未達の場合は様々な「言い訳」ができてしまう。
日立による情報開示が100%明瞭だとは言わないが、少なくとも同社はルマーダの売上に計上する事業を、顧客のデータを解析して課題を解決するソリューション事業と、そのソリューションに関連するモノのインターネット(IoT)分野のシステム構築事業の2つと定義し、それぞれの売上高が分かるようにしてきた。
富士通が背水の陣でDX企業への脱皮を図るならば、「デジタル領域」の実績について分かりやすく情報開示していくべきだろう。
デジタル技術を活用したビジネスは成長市場だが、IT企業や電機メーカー、コンサルなどが参入し競争が激化している。
富士通が激戦の中を生き抜くには、今回の経営目標の次の成長戦略が重要になる。人事制度をはじめとした内部の改革と合わせて、5000億円の成長投資枠の使い方が鍵を握ることになるだろう。