保険金額1000億円超

 さらに現実を見れば、大きな災害は毎年のように続いている。

 日本損害保険協会の集計によれば、台風21号や中国・四国地方の集中豪雨など昨年度の自然災害が三つ、歴代の支払保険金額で10位以内に入った。今年も台風15号と19号により大手各社の支払保険金額は1000億円を上回る勢いだ。

 大手損保は国内の自然災害による保険金の(正味)支払額をグループ連結で500億円程度と期初に見込んで業績予想を算出しているが、想定を超える規模の支払いが続くことになる。災害による支払保険金の見込み額を巡り、適正な水準と再保険でカバーする範囲を急ぎ議論する必要に迫られる。

 関東地方の地方銀行幹部からは「企業が抱える浸水リスクを今まではきちんと見てこなかったが、今後は融資の際に頭に入れる必要がある」との声も上がっている。

 ただ、これらはかねて想定できたことだ。英保険組織のロイズが英ケンブリッジ大学と共同で世界279都市を対象に紛争や災害の脅威リスクを試算しており、日本は経済損失額世界1位となっている(下図)。なお損失額に占める自然災害の割合は大きい。

 台風15号、続く19号でも相次いだ停電は、リスクが分かっていても有効な策を講じなかったが故。「災害、特に台風に対しては基本的に受け身でしかない」と大手電力幹部は真情を吐露する。「送電線、配電所、電柱などについて、台風に備えた強化策は基本的にない。災害による被害を受けたら直すというのが基本スタンス」(前出の大手電力幹部)であり、電線を地中に埋めて電柱をなくす策などはコスト面から普及が難しかった。

 国は国土強靱化のための重要インフラの緊急対策として、19年度からの3ヵ年で総事業費約7兆円の予算を付けた。台風19号を受けて、現政権は足元でも災害対策の補正予算を検討している。