浸水した物件はある程度の災害リスクを織り込んだ値付けで、購入時にハザードマップを注意深く見ればリスクを予想できるが、多摩川の川崎市側である武蔵小杉で浸水に遭ったタワーマンションの居住者は「そこまでの想定は全くしていなかった」と嘆く。大きな災害に巻き込まれると思わなかったのは、程度の差はあれ総じて一般的で、それは個人に限らない。
北陸新幹線について「千曲川の近くに車両センターがあること自体がおかしい」との非難の声も出ているが、「まさか千曲川があふれるとは、1996年に車両センターができたときから、思う人はいなかった」(JR関係者)。
前出の郡山中央工業団地のほか、福島県内では伊達市のやながわ工業団地の被害が大きい。どちらも自治体で初めて造成された第1世代の工業団地で、過去に水害に遭っていた。郡山中央工業団地はようやく水害対策として地下に貯水槽を造る計画を進めていたところだった。「東日本大震災以降に造成された工業団地は高台に立地するなど水害対策に特に配慮しているが、古い工業団地ではそこまでいっていないところもある」と福島県企業立地課の担当者。ただ全国的に見れば、新たな用地候補は河川に近いところが多い。
経済産業省が編集した全国の産業用地候補1222件のデータを基にダイヤモンド編集部が河川に近い用地候補を集計したところ、少なくとも約半数が該当した。製造業の工場では水が欠かせないことも多いため、河川を避けるのは簡単ではなく、リスクを想定して用地とするしかない現実もある。