マキちゃんは「先生の話を聞く」という、ちゃんとした目的を持っていたの。それで、よく聞こえるほうの耳を私に向けていた。結果的に、顔を横に向けることになっていたのね。 それなのに私は、「目を見て話を聞く」なんて、大人の常識だけに縛られて、理由も聞かず、ただ叱っていたのですから。

 大人は人生の中で、理想や常識、ルールをしっかり身につけてきています。私なんて、90年分もの「あたりまえ」があります。そうした「あたりまえ」や常識に沿わない行動(これを「問題行動」と呼ぶのですね)をとる子どもがいると、つい頭ごなしに正してしまいたくなるのかもしれません。

 でも、子どもはいろいろな「目的」を持っていて、ただそれに従って行動しています。

「この子は、どういう気持ちでこんなことをしているんだろう?」
「この行動には、どういう意図があるんだろう?」

 子どもをじっくり見て、見つけてあげてください。「アッ、そういうことだったのね!」って気づくこと、たくさんありますよ。

理不尽な現実にぶつかった子には
「ステキなところ」を伝えてあげる

 また、うちの園を卒園し、小学校に入学したばかりのタカちゃんという子がいました。ある日、お母さんから「先生、実は学校でこんなことがあったんですけど……」と電話がかかってきました。

「授業で新聞紙を使うから、ひとり3枚持ってきなさい」と先生が言った。タカちゃんは、「忘れてしまう子もいるだろうから」と10枚持っていった。案の定、忘れてしまった友だちがいたから新聞紙を分けてあげた。すると先生から、「忘れた子には『困る』という罰が必要なのだから、余計なことをするな」と怒られた。「……どう思いますか?」というわけです。

 確かに「罰」という発想は、園にはありませんでした。また、タカちゃんが周りに貢献したいという気持ち、困っている友だちを助けたいという優しい心を持っていたのは明らかでしょう。お母さんがモヤモヤするのもわかります。