だけれども、その子に関することは、その子自身に決める権利があります。私たち大人の仕事は、「決めるための材料」を与えることだけ、なのです。

自分のことを決めるための
「材料」を伝えよう

文字に全く興味のない子が「ひらがな博士」に!92歳保育士の子育て術

 もちろん、はじめから「決める」はちょっと難しい。だからまずは、「選ぶ」からスタートします。うちでは1歳児になると、「選ぶ練習」をはじめます。たとえば、お昼ごはんのときにおしぼりを2つ出して「どっちにする?」と聞く。両方とも同じおしぼりですけど、「うーん、こっちにする」「そっち!」と選んでもらうのです。その他にも、「牛乳とお茶、どっちを飲む?」「お味噌汁、どれくらいよそう?」など、できるだけ自分で決めてもらいます。

 また、散歩に行くか行かないかも、子どもが決めます。「今日は気分が乗らないから、お部屋で遊びたい」と決めた子は、お留守番でかまいません。おうちでは、まず靴下やシャツなど身に着けるものを選んでもらってはどうでしょう。ちぐはぐな組み合わせになってもご愛敬。子どもらしくてかわいいですよ。

 こうして「選ぶ経験」を積み重ねていくと、だんだん「自分で決める」ができるようになります。

 そして、子どもが決めたことには口出し無用です。たとえば保育園に着ていく服に、ヒラヒラのフリルがついたよそゆきのかわいい服を選んだ女の子がいたとします。当然シンプルな服のほうが遊びやすいし、親としても保育園着にするのはもったいない。でも、「それを脱いでこっちの服を着なさい」なんて命令したら、子どもは自分の決定を否定されたようで、おもしろくないですよね。

 ただし、「ハイハイ」と言うことをただ聞くわけではありません。子どもは、決めるための十分な知識を持っているとはいえないからです。ですからこういう場合は、「決めるうえで必要な材料」を伝えてあげるのです。

「マリちゃんが大好きなお洋服が汚れちゃうかもしれないけれど、ほんとうにいいの?」

「それでもいいもん」と言うのなら、「えーッ、もったいないなあ」と思いつつも、黙ってその決断を受け入れてあげましょう。結果的に、「やっぱりこれ、遊びづらい!」「汚したくない!」と気づいて服を決め直すのも、またよし。軌道修正の、いい経験になりますから。

(小俣幼児生活団 主任保育士 大川繁子)