容疑者が顔認証カメラを設置したセキュリティ・チェックポイントを通ってから数分後、「逃亡者に似た人物が現れた」という合図が警察当局のシステムに届き、その後警官がスタンドの出入り口で張り込み捜査していたところ、コンサートが終了して出て来た逃亡犯の身柄を難なく確保することができたという。

「我々が彼を見つけたときは、もちろん彼はわけがわからないという様子だった。我々も数万人の中から犯人を探すことができるとは、思いもよらなかった」

 逮捕作戦を指揮した嘉興市警察当局の責任者も、顔認証技術の威力に感嘆したほどである。

赤信号を無視して渡ると
モニターで個人情報が晒される

 一方、深セン市の交通警察は顔認証システムを利用して、信号無視した人を撮影した。名前、写真などの個人情報を、街の通りにあるスクリーンモニターと、「信号無視通行人スクープ」というサイトに公開した。

 深センのメディアは、このような監視カメラが撮影した顔情報と社会信用システムなどをドッキングさせれば、「信号無視通行者に対する教育・懲戒を実施することができ、国民の総合的な素質を徐々に養成し、さらには都市のイメージアップになる」と報じている。現在、少なくとも5つの都市で交通規則違反の通行人を認識する技術が使われている。

 実際、上海の外灘で赤信号を待っていたとき、その実施現場を私も目撃した。赤信号でも強引に道路を渡った女性がいた。すかさずに道路の向こう側にあるモニターにその女性の顔が映され、氏名、性別、出身地などのプライバシーに関する情報も同時に公開された。

 現在の日本では考えられない光景だが、顔認証システムが広範囲で普及している中国では日常的風景になりつつある。コンサートでの逃亡犯逮捕は、それを応用した氷山の一角にすぎない。中国の都市をまわれば、あらゆる場所にカメラを見つけることができる。地下鉄の出入り口、駅、通り、ショッピングセンター、スーパー、体育館、図書館、団地……。公共の場所での一挙手一投足は、すべて記録されると言っても過言ではないほどだ。