ライト兄弟の有人動力飛行に
匹敵するマイルストーンだ

 僕は今回の成果は、ライト兄弟が有人動力飛行に成功(1903年)したのと同じインパクトを持つと思います。最初に空中に浮上した時間はたった数秒。「それで飛んだことになるのか」「実際には何の役にも立たないじゃないか」とも言えますが、この数秒のブレークスルーがその後の飛行機の進化を加速させる重要なマイルストーンになったのです。

――重要な一歩が踏み出されたとして、今後は何が課題ですか。

 次のマイルストーンは、実用的な問題で量子コンピューターの方が速く正確だと示すこと、つまり「量子加速(Quantum Speedup、またはQuantum Advantage)」が達成されることです。そのためには、もっと量子ビット数の大きい本格的な規模の量子コンピューターができることや、優れたアルゴリズムが考案されることが必要です。

――今回グーグルが使った量子コンピューターは、どの程度の規模だったのですか。

山城 53量子ビットです。研究者が考える量子コンピューターの最終形は100万量子ビットなので、まだまだ小規模なものです。ですが、グーグルは72量子ビットのものを開発中です。すごくざっくりとした表現にはなりますが、1量子ビット増えると性能は倍増します。72量子ビットが実現されれば性能は飛躍的に向上します。実際にはもっといろんな要素が絡むのでこの通りではありませんが、性能面の進歩は大きい。100~200量子ビットに達すれば、産業で実用できると言われています。

――今回の成果を受けて、量子コンピューターは実際に産業界で使われるようになると考えてよいですか。

 グーグルは2022年までに、環境問題に役立つ成果が生まれるという主旨の主張をしています。僕の実感から言ってもこれから2~3年程度で、化学業界で量子コンピューターによる変化が起こりそう。つまり何と何を合成すればもっと環境負荷が低く、低コストで化学物質を作ることができるのか、というシミュレーションが従来のコンピューターより容易になると思います。それは決して、たくさん生まれるわけではないけれど、1つでも2つでも新しい合成方法が判明すれば、産業的インパクトは大きい。