楊 研究の具体的な内容は、最速のスパコンで1万年かかる計算問題が、グーグルの量子コンピューターを使って200秒で解けた、というものです。ポイントはこの成果によって、「量子超越性(Quantum Supremacy)を達成できた」ということ。これがコンピューター研究において非常に大きな前進なのです。
――量子超越性って何ですか。
楊 これまでのコンピューターでは長い時間がかかる計算を、量子コンピューターなら高速で処理できることです。量子超越性を達成できるなら、実際の社会では役に立たない問題でもよい、というところがミソでもあります。
――実際には何を計算したのですか。
楊 量子コンピューターの動作をシミュレーションしました。
――量子コンピューターで量子コンピューターをシミュレーション、ですか。「自分の家は自分が一番よく知っている」的で、ずるい気がしますが。
山城 問題が何であれ、これまでのコンピューターよりも速く計算できた、という意義は非常に大きいんですよ。従来の研究では、これまでのコンピューター以下の速度でしか量子コンピューターではできなかったわけですから。
1981年に米物理学者のファインマンが原型となるアイデアを示して以降、「量子コンピューターの理論はあるが、本当に可能なのか」という状態が続きました。今回の発表に至るまでにも、重要な研究成果はいくつかあったのですが、「量子コンピューターでこそできることがある」という1点については、ざっくり言えば机上の空論状態だったのです。