多くのメディアは数値目標を「取りやめ」「断念」「撤回」と書き立てたが、大綱をよく読むと、そうはいえないことが分かる。

 というのも、「70歳代での発症を10年間で1歳遅らせる」という文言は、個別の目標の欄からはなくなったが、決定した大綱では、冒頭の「基本的考え方」の本文中に「結果として、70 歳代での発症を10年間で1歳遅らせることを目指す」としっかり書き込まれている。

「目標」から外したというのに、「目指す」と表記している。これで、外したといえるのだろうか。厚労省に確認すると「個別の目標には入っていないので、目標とはしていないということ。本文の『目指す』は目標ではない、と解釈しています」という不思議な答えが返ってきた。何ともおかしな弁明だろう。詭弁である。

 元々素案では「70歳代での発症を10年間で1歳遅らせる」という文言から、より分かりやすい表現として「70代人口に占める認知症の割合を6年で6%減らす」を書き込んでおり、2つの文章は一体であった。その片方を引っ込めて、もう片方は場所を移動させたにすぎない。「予防」を強調する姿勢は変わっていない。2本柱の1つであることに変わりはない。

 それは、大綱と新オレンジプランを見比べてみると鮮明になる。「新オレンジプラン」の「7つの柱」で「予防」に触れているのは6番目に「認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進」であった。その文中では「予防法は十分には確立されていない」とし、「有効な予防法の開発に繋げていく」と穏当な表現にとどめている。

 だが、大綱では、「予防」だけを取り出して独立させ、5つの「具体的施策」のうちの2番目に据えている。相当な「昇格」である。

 そこでは、「通いの場」への参加率を8%に、とか週1回以上のスポーツ実施率を65%に、など8項目も並べ、そのうえで「予防」の定義も新しく定めた。その定義が、大綱で最も目を引くことになった。

「本大綱における『予防』とは、『認知症にならない』という意味ではなく、『認知症になるのを遅らせる』『認知症になっても進行を緩やかにする』という意味である」と記す。政府がわざわざ日本語の意味を再定義したのである。

 その直前には「認知症予防には、認知症の発症遅延や発症リスク低減(1次予防)、早期発見・早期対応 (2次予防)、重症化予防、機能維持、行動・心理症状(以下「BPSD」という)の予防・対応(3次予防)がある」と根拠を上げる。